研究課題/領域番号 |
23550135
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
高木 幸治 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60303690)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ポリチオフェン / 高分子反応 / ネットワーク構造 |
研究概要 |
有機薄膜太陽電池の革新的な性能向上には、『頭尾結合、分子量、ネットワーク構造が全て制御された共役高分子材料』を簡便に合成できる技術の開発が課題である。これまでに研究代表者は、3位にピリジン環を有する2,5-ジブロモチオフェンとGrignard試薬とのハロゲン-金属交換反応(いわゆるGRIM反応)において、ピリジン窒素がマグネシウムに分子内キレート配位することにより、高い選択性で2位がメタル化されること、およびこれをモノマーとしてニッケル触媒により熊田カップリング重合を行うと、頭尾結合の割合が96%と非常に高く、ほぼ望み通りの分子量をもつ新規ポリチオフェンが合成できることを明らかにした。本研究では、側鎖に官能基を有するポリチオフェン共重合体を"側鎖型反応性共役高分子"として精密合成し、官能基を利用した高分子反応を行うことで、共役高分子の三次元ネットワークを構築することが目的である。 3位に保護されたアセチレン基を有するモノマーについては、当初計画していた化合物の合成が困難であったので、エーテル結合を介したモノマーを合成した。GRIM反応を行った結果、2位と5位が同等にハロゲン交換を起こした。得られるGrignardモノマーの熊田カップリング重合では、停止反応の存在が示唆されたため、ヘキシルチオフェンを第1モノマーとするブロック共重合体を合成した。また、高分子反応でアセチレンの脱保護反応を行った。一方、3位にピリジン環を有するモノマーについては、ヘキシルチオフェンとのブロック共重合に成功した。キシリレンジブロミドを2官能性試薬として反応させたところ、マルチアームスターポリマーが形成される結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3位に保護されたアセチレン基を有するモノマーについては、構造中に含まれるエーテル酸素のため重合が綺麗に進行せず、ブロック共重合体におけるセグメント比が制御できなかった。しかし、高分子反応を検討し、のちのネットワーク構造形成につながる骨格へと変換することができた。3位にピリジン環を有するモノマーについては、ヘキシルチオフェンとのブロック共重合が良好に進行した。また当初計画になかった2官能性試薬との反応によるネットワーク構造の形成まで着手できた。
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今後の研究の推進方策 |
3位に保護されたアセチレン基を有するモノマーについては、チオフェン環とのメチレンスペーサー長を変えたモノマーを再設計し、現在合成に着手しているところである。GRIM反応を行い、メチレンスペーサー長とハロゲン交換の選択性を考察し、熊田カップリング重合、ならびにヘキシルチオフェンとの共重合を検証する。3位にピリジン環を有するモノマーについては、反応性基が主鎖に近いため、高分子反応の効率が低いことが課題として見つかった。そこで、ヘキサメチレン基を挟んでイミダゾール環を有するポリチオフェン共重合体を新たな合成ターゲットに加え、これの高分子反応によるネットワーク構造形成も検討する。 なお、平成23年度は他予算により消耗品費などが充当できたため、所要額の一部を次年度使用額とした。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究を遂行するための機械設備は十分確保することができたため、平成24年度は材料合成に要する試薬やガラス器具を初めとした消耗品を中心に予算を執行する。また、得られた成果を公表すると共に、関連分野の研究動向を調査するための学会参加登録費や旅費を計上する。
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