研究課題/領域番号 |
23550135
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
高木 幸治 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60303690)
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キーワード | ポリチオフェン / 高分子反応 / ネットワーク構造 |
研究概要 |
有機薄膜太陽電池の革新的な性能向上には、『頭尾結合、分子量、ネットワーク構造が全て制御された共役高分子材料』を簡便に合成できる技術の開発が課題である。これまでに研究代表者は、3位にピリジン環を有する2,5-ジブロモチオフェンをモノマーとした重合において、頭尾結合の割合が96%と高く、ほぼ望み通りの分子量をもつ新規ポリチオフェンが合成できることを報告している。本研究では、側鎖に官能基を有するポリチオフェン共重合体を“側鎖型反応性共役高分子”として精密合成し、官能基を利用した高分子反応を行うことで、共役高分子の三次元ネットワークを構築することを目的とする。 平成24年度は、昨年度に引き続き、高分子反応可能な官能基を有するポリチオフェンブロック共重合体の合成とネットワーク形成について検討した。第一セグメントにヘキシル基、第二セグメントにピリジン環をもつポリチオフェンブロック共重合体では、後者をピリジニウム塩に誘導することで、両親媒性が発現し、選択溶媒中で凝集体を形成することをNMRやDLS測定から明らかにした。2官能性のジブロモ-p-キシリレンとの反応でもヘキシルチオフェンセグメントを外側に有するマルチアームスターポリマーができていることを同様に確認した。一方、第二セグメントにブロモヘキシル基をもつポリチオフェンブロック共重合体では、これを高分子反応でイミダゾリウム塩へと誘導した。この場合、溶媒の組み合わせを選ぶことで、ヘキシルチオフェンセグメントを内側あるいは外側に有する凝集体が得られることをDLS測定や吸収/発光スペクトル測定から明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
数種類のポリチオフェンブロック共重合体の合成、ならびに高分子反応を利用した凝集体、マルチアームスターポリマーの形成に成功した。凝集体のコア成分とシェル成分を選択できることも分かった。当該年度は、各種スペクトル測定から、凝集体やマルチアームスターポリマーのサイズや光学特性を明らかにできた。ただ、任意のサイズの凝集体、マルチアームスターポリマーを分子設計して調製するには至っていない。一方、今回研究を行うなかで、ピリミジン環を官能基とする新しいモノマーの合成、および精密重合法について確立することができた。従来のピリジン環を有するポリチオフェンよりも、立体障害が軽減されることから、優れたπ―スタッキング能力をもつことを示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、イミダゾリウム塩を側鎖末端に有するポリチオフェンブロック共重合体の合成に成功し、溶媒の組み合わせを選ぶことで、ヘキシルチオフェンセグメントを内側あるいは外側に有する凝集体が得られることを明らかにした。ただ、溶媒極性の違いによって集合しているだけであり、共有結合で結ばれたような安定構造とはなっていない。平成25年度は、この点について集中的に研究し、①イミダゾリウム塩からカルベンを発生させ、金属イオンなどと配位させる、②カルベンと有機試薬との反応により共有結合を作るなどの方法により、安定したネットワーク構造の形成を目指す。また、②においては、チオイソシアナートとの反応で得られる結合が動的共有結合に分類されるものであるので、ネットワーク構造を可逆的に形成/破壊できるような系の構築も検討する。さらに、平成24年度に課題として残った任意のサイズの凝集体、マルチアームスターポリマーの生成も再検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度までに、本研究を遂行するための機械設備は十分確保することができているため、最終年度である平成25年度は材料合成に要する試薬やガラス器具を初めとした消耗品を中心に予算を執行し、研究の完了を目指す。また、得られた成果を学術誌にて公表すると共に、関連分野の研究動向を調査するための学会参加登録費や旅費を計上する計画である。 なお、平成24年度は他予算により消耗品費などが充当できたため、所要額の一部を次年度使用額とした。
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