研究概要 |
有機薄膜太陽電池の革新的な性能向上には、『頭尾結合、分子量、ネットワーク構造が全て制御された共役高分子材料』を簡便に合成できる技術の開発が課題である。これまでに研究代表者は、3位にピリジン環を有する2,5-ジブロモチオフェンをモノマーとした重合において、頭尾結合の割合が96%と高く、ほぼ望み通りの分子量をもつ新規ポリチオフェンが合成できることを報告している。本研究では、側鎖に官能基を有するポリチオフェン共重合体を“側鎖型反応性共役高分子”として精密合成し、官能基を利用した高分子反応を行うことで、共役高分子の三次元ネットワークを構築することを目的とする。 最終年度にあたる平成25年度は、2つのテーマについて検討した。まず、2-ブロモ-5-ヨードチオフェンを2つ有する多官能性モノマーを合成し、3-ヘキシルチオフェンのリビング重合後にワンポットでナノゲルを合成することを検討した。モノマーやニッケル触媒の仕込み比を変えることで、ナノゲルのサイズ(直径8ナノから15ナノ)を制御できることを明らかにした。一方、主鎖にドナーアクセプター型のユニット、末端にイオン的に開環して重合性を示すベンゾオキサジンを導入した共役高分子を園頭カップリング重合によって合成し、加熱によるネットワーク構造の形成を検討した。最適化された温度範囲(160℃から200℃)では、主鎖の副反応は無視でき、ベンゾオキサジン部分の架橋反応のみが起こることを確認した。 研究期間全体を通じて、いくつかの共役高分子で、頭尾結合の制御や分子量制御、およびネットワーク構造の形成が達成できた。特に、ポリチオフェン誘導体では、十から百ナノメートルサイズの共役高分子ナノゲルを得ることに成功した。 本研究で得られた成果は、共役高分子の高次構造を制御する新しい方法論を提供するものであり、有機半導体材料の開発に有益な知見を与えるものと考える。
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