研究課題/領域番号 |
23550136
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
佐々木 園 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (40304745)
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キーワード | すれすれ入射X線散乱法 / 高分子系太陽電池材料 / 放射光を利用した動的構造評価法 / ポリアルキルチオフェン:フラーレン誘導体ブレンド / ナノ構造 / 結晶化 / 相分離 |
研究概要 |
本研究は、高分子系有機薄膜太陽電池の性能を左右する反応活性界面におけるナノ構造変化を放射光の高輝度X線を用いて直接評価するためのX線散乱実験法を構築し、電荷が偏析する界面形状と光電変換特性との相関性を分子レベルで解明することを目的とする。平成24年度は、ポリアルキルチオフェン(P3AT)とフラーレン誘導体(PCBM)のブレンド系で、P3ATやPCBMの側鎖アルキル鎖長とP3HTの結晶構造・結晶化度との相関性を検討した。P3AT:PCBMブレンド溶液を用いてシリコン基板上にスピンコート法で数百nmの厚みの薄膜を成膜した。ブレンド薄膜の膜厚はサーフコーダーで評価した。この薄膜は、P3ATとPCBMが相分離した構造を有することが報告されている。P3AT:PCBMブレンド薄膜に対するすれすれ入射X線散乱(Grazing-incidence X-ray scattering : GIXS)測定は、大型放射光施設SPring-8の構造生物学Iビームラン((独)理化学研究所、BL45XU)で行った。P3ATのアルキル鎖長が6から12に増加すると、P3AT結晶からの100反射が低角側にシフトし、P3ATのedge-on 結晶の面間隔d(100)が長くなることがわかった。蒸気圧の異なる溶媒に対するP3AT:PCBM薄膜の結晶化挙動とモルホロジーの違いについても検討も行った。(「スピンコート製膜過程におけるP3AT:PCBMブレンドの結晶化挙動」、第61回高分子討論会、2012/9/20、名古屋大学)放射光を利用したGIXSと電流-電圧(I-V)特性との同時計測用試料であるP3AT:PCBMブレンド薄膜に関する検討を進める一方で、同時計測システムを構築のための試料周辺装置の構築を行った。試料周辺装置はまだ準備段階にあるが、来年度に実験できるようにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までに高分子系太陽電池材料の構造の特徴を把握し、成膜方法や成膜に用いる溶媒との相溶性に関して理解を深めることができた。実験に必要な試料周辺装置も揃い、 試験的実験を行う前の段階である。これらのことから、本研究はまだ目立った成果はないがおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、ポリアルキルチオフェン(P3AT)とフラーレン誘導体(PCBM)のブレンド系薄膜を用いて、放射光を利用したGIXSと電流-電圧(I-V)特性との同時計を行う予定である。薄膜はスピンコート法によりITO基板上に成膜する。実験は、大型放射光施設SPring-8の構造生物学Iビームラン((独)理化学研究所、BL45XU)で行う予定である。疑似太陽光を照射しながら試料からのGIXS測定を行い、光電変換時に分子凝集状態に変化があるかどうかについて検討し、研究成果としてまとめる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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