研究課題/領域番号 |
23550139
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
須賀 健雄 早稲田大学, 理工学術院, 講師 (10409659)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ブロック共重合体 / ラジカル / イオン液体 / ミクロ相分離 / 自己組織化 / 精密重合 / 国際研究者交流 ドイツ / 国際研究者交流 アメリカ |
研究概要 |
1. 精密ラジカル重合によるラジカル/イオン置換ブロック共重合体の合成 反応性高いラジカル存在下でも進行する高分子合成化学の開拓を目的として、2つの精密重合法を検討した。DEPN系アルコキシアミン開始剤BlocBuilderを用いたニトロキシド媒介精密ラジカル重合(NMP)では、イミダゾリウム置換スチレン、ラジカル前駆モノマーであるピペリジニルアクリレートの順で精密重合した。また、Grubbs触媒を用いた開環メタセシス重合では、TEMPO置換ノルボルネン、イミダゾリウム置換ノルボルネンをワンポットで逐次重合することでラジカル/イオン含有ブロック共重合体を得ることに成功した。 得られたブロック共重合体はセグメント長によりランダム配向したシリンダー構造を形成したが、汎用ブロック共重合体(PS-b-PEO)ほどの制御された相分離構造の構築は困難であった。2. ラジカル置換イオン液体の合成とミクロ相分離構造への選択的導入 汎用ブロック共重合体、例えばポリ(スチレン-b-ポリエチレンオキシド)(PS-b-PEO)が自己組織化により形成するミクロ相分離構造のPEO相への選択的な機能分子の集積化を試みた。2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-N-オキシ(TEMPO)をイミダゾリウム系イオン液体に連結させた分子を合成、PS-b-PEOに加えると、PEOの融点ピークが消失し、PEOのガラス転移温度Tgがシフトしたのに対し、PSのTgがシフトしないことから、イオン液体をキャリアとしたPEO相への機能部位の選択的取り込みを明らかにした。TEM観察および磁気力顕微鏡(MFM)像におけるPEO相の膨潤、固体NMRによるPEOピークのブロード化などからラジカル連結イオン液体のPEO相への取り込みを支持した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度に計画したラジカル/イオン含有ブロック共重合体の精密合成法を2つ確立済みである。特にラジカルモノマー自身の重合が可能である開環メタセシス重合を適用したブロック共重合体の精密合成を明らかにした点が大きい。また、汎用ブロック共重合体とイオン液体の相互作用に基づくミクロドメインの選択的な機能化については、有機メモリ素子として実デバイスへと展開した。モルフォロジーによるメモリ特性の発現制御など、モルフォロジーと電子物性の相関について明らかにした結果はAdvanced Materials誌に掲載され、インパクト高く成果報告することができた。本年度はメモリ特性発現機構の解明に踏み込むべくconducting AFMなどの共同実験を計画している。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に得られたラジカル/イオン含有ブロック共重合体が形成するミクロ相分離構造の解析に注力する。また、固体NMRや小角X線散乱等によりイオン液体とミクロドメインとの相互作用パラメーターを算出し、イオン液体の機能分子のキャリア能について定量化する予定である。また、分子設計によりドメイン界面への機能部位の選択配置に挑戦する。 ミクロ相分離構造および配向性などモルフォロジーと有機メモリ特性の相関を明らかにするため、プローブ顕微鏡を用いた電圧ー電流密度分布などを可視化し、メモリ特性発現の機構について考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
重合触媒、汎用ブロック共重合体の標準試料など化学試薬や、プローブ顕微鏡の電流密度計測用オプションの購入を計画している。 小角X線散乱やconducting AFM測定などを海外共同研究者の協力を得て実施するため、米・国立標準技術局(NIST)や独・Max Planck高分子研究所への出張(各1-2週間)を計画している。
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