研究課題/領域番号 |
23550139
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
須賀 健雄 早稲田大学, 高等研究所, 助教 (10409659)
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キーワード | ミクロ相分離 / ブロック共重合体 / ラジカル / イオン液体 / 精密重合 / 有機メモリ / 走査プローブ顕微鏡 / 国際研究者交流 ドイツ |
研究概要 |
(1) ラジカル/イオン置換ブロック共重合体の有機メモリ特性 昨年度までに電荷授受能を有するラジカル、電荷補償能を有するイオン液体部位を各セグメントに置換した機能性ブロック型高分子の精密合成に成功している。本年度は、セグメント比、熱アニーリング、選択溶媒を用いたアニーリングの検討により、スフィア、ラメラ、逆スフィア型のミクロドメイン構造を生起させた。ITO, Al電極でミクロ相分離膜を挟んだ簡便な有機薄膜素子では、いずれも一回書込み(WORM)型のメモリ特性を示し、ミクロドメイン構造だけでなく、ラジカル/イオンなど機能部位のドメイン配置もメモリ特性の違いに寄与することを明らかにした。 (2) ラジカル/イオン含有ミクロドメインへの電圧印加による表面電位変化 昨年度までに、機能分子(例えばTEMPO)にイオン液体部位を導入することで、イオン液体がキャリアとして機能し、汎用ブロック共重合体(例: PS-b-PEO)の親イオンドメインへ選択的に集積・配置できることを、示差熱分析、固体NMR、各種電顕により明らかにした。本年度は、独・Max Planck高分子研究所との共同実験としてKelvin Probe Force Microscopyを実施した。サンプル下部電極と走査プローブ間に電圧を印加し、ミクロドメインの表面電位分布を計測した。書込み電圧を印加して走査することにより、走査(パターニング)領域の表面電位が他と比べ大きくなることを見出し、電荷注入のしやすさの変化を支持し、メモリ特性発現機構の手がかりを得た。 (3) 活性エステル導入ブロック共重合体の精密合成 ラジカル/イオンを片側ドメインへ任意に導入できる利点を有する反応性高分子として、Click反応が可能なペンタフルオロフェニルエステルを持つブロック共重合体をRAFT重合により合成した。次年度にClick反応を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度精密合成に成功したラジカル/イオン置換ブロック共重合体を用いて有機メモリ素子を作製した。別ドメインにラジカル、イオンを配置することで1回書き込み型(WORM)型のメモリ特性を示し、これまでに明らかにしたドメイン構造、配向性に加え、機能部位の配置の重要性を明らかにした。 また、メモリ特性発現機構の解明に踏み込むべく、独Max Planck高分子研究所に2週間滞在し、走査プローブ顕微鏡を用いた印加電圧と表面電位、局所的な導電性評価について予備検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本年度精密合成した活性エステル含有ブロック共重合体を元に、ラジカル、イオンを共存かつ任意の割合で片側ドメインに導入したブロック共重合体を合成する。 固体NMRや小角X線散乱、TEM等によりイオン液体とミクロドメインとの相互作用を、機能分子のキャリア能として定量化する予定である。また、導電性の走査プローブを用いて電圧印加し、On/Offスイッチング時の、表面電位、電流密度分布を可視化し、メモリ特性発現の機構について考察を深める。
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次年度の研究費の使用計画 |
重合触媒、汎用ブロック共重合体の標準試料など化学試薬や、導電性走査プローブ、TEMグリッド等の消耗品の購入を計画している。 小角X線散乱やconducting AFM測定などを海外共同研究者の協力を得て実施するため、米・国立標準技術局(NIST)や独・Max Planck 高分子研究所への出張(各1-2週間)を計画している。
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