(1) 機能性ミクロドメイン薄膜の有機メモリ機構の考察 昨年度までに繰り返しOn/Offスイッチングを示す機能性ミクロ相分離ドメインの要件を明らかにした。本年度は走査プローブ顕微鏡を用いて有機メモリ特性の発現機構について詳細に検討した。PS-b-PEO(Mn = 37k-b-6.5k)のPEOスフィアドメインにTEMPO置換イオン液体1を20 wt%選択的に導入したミクロ相分離薄膜を対象に、導電性プローブを用いて電位印加にともなうOn/Offスイッチング前後での表面電位変化をKelvin Probe Force Microscopy (KPFM)により測定した。書込みにともなう形状、位相像に大きな変化はなく、表面電位のみ1桁高くなり、電荷注入のしやすい状態へ変化したと考えられる。対照実験となるTEMPOイオン液体1を含まないPS-PEO薄膜では、書込み電圧印加後も表面電位変化は小さく、On/Offスイッチングには1の存在が不可欠であることを支持した。また、Conductive AFM測定より電位印加部の導電率が上がりパターニングできることを明らかにした。一方、導電性パターンは1つのスフィアドメイン上ではなく複数ドメインにわたり広がって現れ、非連続相を経由するOn/Offでは記録密度の限界もあることを示した。 (2) クリック反応を用いた機能性ブロック共重合体の精密合成 昨年度までに精密合成を確立した反応活性ブロック共重合体を元に、クリック反応でラジカル・イオン部位を同一ドメインに任意の割合で導入した機能性ブロック共重合体を合成した。得られた素子において1回書込み (WORM)型のメモリ挙動を明らかにした。
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