エポキシ樹脂の酸化分解性硬化剤として、ジアシルヒドラジン構造を有するビスフェノールにブチルエステルとオクチルエステル構造を導入し、エチルエステル、ポリエーテル鎖を持つエステルとの比較をおこなった。エステルのアルキル鎖が長くなるにつれ硬化剤の溶解性は向上し、同時に硬化体の酸化分解性は高くなったが、硬化体の耐熱性はわずかに低下した。硬化剤としてビスフェノールAを用いたものと接着力を定量的に比較したところ、ジアシルヒドラジン構造を導入することで接着力は低下したが、その低下の程度は1/2~1/3であり、十分に強く接着した。ジアシルヒドラジンとホルムアルデヒドの反応を検討したところ、通常のアミドと異なり、ジアシルヒドラジンはホルムアルデヒドによるヒドロキシメチル化を受けないことが分かった。そこで、メトキシメチル化されたジアシルヒドラジンを合成した。汎用ポリマーをジアシルヒドラジンで架橋するために、ジアシルヒドラジン構造を有する二官能性モノマーを合成した。これはジアシルヒドラジン構造のために低極性モノマーとは混和しなかったが、アミド構造をもつモノマーとは混和し、ラジカル重合により架橋体を与えた。ヒドラジド構造をもつアクリルアミド型のモノマーは熱的に不安定であることを明らかにした。ヒドラジド基をBocで保護したモノマーを合成して重合に用いた。アクリル酸メチルとスチレンとの高分子量の共重合体を合成した。これはヒドラジンとの反応により、分子量の低い共重合体と同様にメチルエステル部位がヒドラジド化された。得られたポリマーは約25%のヒドラジド含有率を示したが、クロロホルムやTHFなどの非極性溶媒にも溶解した。このポリマーは少量の酸クロリドで処理したところ、速やかに架橋して不溶性ポリマーを与えた。この不溶性ポリマーは次亜塩素酸ナトリウム水溶液で処理することにより脱架橋化され、可溶性ポリマーとなった。
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