研究課題/領域番号 |
23550144
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研究機関 | 高知工業高等専門学校 |
研究代表者 |
森長 久豊 高知工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (20396584)
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キーワード | 高分子合成化学 / イモータル重合 / 開環重合 / エポキシド / メタルフリー |
研究概要 |
24年度では、本系がメタルフリーイモータル重合系である特性を活かし、2種類の機能性ポリマーの合成を試みた。 一つは、ポリエチレングリコールメチルエーテル(PEGM)をプロトン性マクロ連鎖移動剤として用いることで、GPE(グリシジルフェニルエーテル)の開環重合を行ない、ブロック共重合体の簡便な合成を試みた。得られたポリマーは、poly(GPE)とPEGMの両組成を有していた。また、ゲル浸透クロマトグラフィー分析から、多分散度が1.2未満の単峰性のピークを示したことから、ブロック共重合体であることがわかった。このブロック共重合体は、汎用有機溶媒だけでなく水にも可溶であったため、両親媒性を示すことが明らかとなった。さらに、PEGMの仕込み量が増加するに従い、共重合体の数平均分子量は低下したことから、PEGMは連鎖移動剤として働き、poly(GPE)の開始末端に結合しているといえる。本共重合体の物性評価として、水中での会合挙動を検討した。疎水性蛍光プローブを用いた蛍光分析法による臨界ミセル濃度の決定と、動的光散乱分析法を用いた会合体の粒径分布の測定を行なった。その結果、代表例として、臨界ミセル濃度は0.034g/Lであり、共重合体濃度3.0g/Lのとき、27nm-193nmに分布を持つ平均粒径58nmの会合体であることがわかった。 もう一つは、アリルアルコールを連鎖移動剤とした同重合である。その結果、ビニル基を開始末端に有するpoly(GPE)のワンポット合成に成功した。 以上のことから、本メタルフリーイモータル重合系を利用することで、両親媒性ブロック共重合体および反応性基を有するポリマーを簡便に合成できたといえる。これは、工業的にも学術的にも意義深い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度に得られた結果(エポキシドのメタルフリーイモータル重合系の確立)に基づいて、24年度では機能性ポリマーの合成を目的とした。その結果、両親媒性ブロック共重合体および反応性ポリマーのワンポット合成に成功した。また、両親媒性ブロック共重合体については、水中での会合挙動の解明も行なった。 24年度の一部の計画を次年度に実施する予定であるが、ほぼ計画通りに研究は進行しており、またその目的も達成出来ているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
24年度に得られたビニル基を開始末端に有する反応性ポリマーについて、その反応性を利用したブロック共重合体の合成を試みる。 また、24年度に引き続き、本系がメタルフリーイモータル重合系である特性を活かし、様々な反応性ポリマーのワンポット合成を検討していく。メタクリレート基やアルキン基、ベンジル基などを有するプロトン性連鎖移動剤を用い、反応性基を開始末端に有するpoly(GPE)を合成する。また、その反応性ポリマーを用いた、機能性ポリマーへの展開を試みる。 さらに、ポリビニルアルコールをマクロ連鎖移動剤とした同重合を行い、グラフト共重合体のワンポット合成も試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は、研究発表に必要な旅費の使用を次年度に繰り越したことに加え、24年度の研究計画の一部を次年度に実施するためである。 予定している研究費の使用用途は、反応性ポリマーおよびグラフト共重合体の合成とその機能性評価に必要な試薬および実験器具の購入である。また、これまでの結果をまとめて、研究発表するための旅費も予定している。
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