研究概要 |
多環縮合系パイ共役構造が線形に超高密度化した高電子伝導性材料を実現するための基礎的な検討として、電解重合を適用する場合にはモノマーの選択が重要な因子の一つである。いくつかの基礎的な検討の結果、電解重合可能な二つのアミノ基を有する芳香族化合物である2,3-ジアノフェナジンに着目し、電気化学的な特性評価と電気化学重合挙動および重合生成物の酸化還元特性評価を行った。強酸性水溶液中で2,3-ジアノフェナジンの重合を行った場合、生成物であるポリマーは複雑な酸化還元挙動を示し、一見して解析が難しく、配向性などは期待できない。一方で、有機酸を添加したアセトニトリル中で2,3-ジアノフェナジンの電解重合を行った場合の生成物は、酸性水溶液中で電解重合を行った場合と全く異なり、吸着種に特有で比較的シンプルな酸化還元応答を示すことを見いだした。この場合、酸性水溶液中でのサイクリックボルタモグラムはピーク電位のpH依存性からは分岐した構造が予想される結果となったが、より重合条件を検討することで分子の配列配向が向上することが期待できる。微細形態を評価するためには走査型トンネル顕微鏡の観察が不可欠であり、その整備を継続している。また、導入した基板加熱ユニットを組み込んだ真空蒸着装置でAu(111)薄膜を作製し作用電極とすることで、より配向性を持たせた2,3-ジアノフェナジンの電解重合条件の検討を継続して行っている。
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