研究課題
極性末端(カルボキシル基,アミノ基および水酸基)を有するn-アルカンを添加したヘキサデカンならびにテトラデカンの全反射赤外分光(ATR-FTIR)スペクトルにおいては,バルク相である流動相からの寄与が大きく,ターゲット因子解析により界面情報の抽出を試みたが,再現性が低く有益な情報を得ることはできず,測定系を変更することにした.炭素数が16-20の脂肪酸あるいは1-モノアルカノイル-rac-グリセロールの単分子膜で被覆したガラス基板と清浄なガラス基板でサンドウィッチセルを作製した.このセルに4-シアノ-4’-n-ペンチル-ビフェニル(5CB)を注入し,偏光顕微鏡観察を行うと、累積膜の調製条件によって水面上単分子膜と類似のテクスチャーを観察できた.膜分子のアルキル鎖長が18以下のときには,鎖密度を5.07 chain/nm2(占有面積:0.197 nm2/chain)まで高くしても5CBの誘導配向が観察された.一方,炭素数が20のときには,先と同じ鎖密度であっても部分的に誘導配向していないことが明らかとなった.以上の結果をまとめると,吸着膜の間にバルク相のアルキル鎖が相互作用することなしに配向制御が行われている.また,この誘導配向が生じる際には,5CBの液晶温度(22.5~35 °C)において液晶相と接触するアルキル鎖の流動性(運動性)が重要であることを示した.運動している固体と流体中を評価するために,水晶振動子微量天秤アドミッタンス解析法(QCM-A)の利用を検討した.電極上にシリカスパッタした水晶振動子を,種々のアルキルアミン(炭素数:10-18)を添加したヘキサデカンに浸漬し,アドミッタンス解析を行った.まだまだ実験誤差大きい状況ではあるものの,アルキルアミンの添加およびアルキルアミンが長鎖になるにつれてエネルギー損失量が増大する傾向を観測した.
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