研究課題/領域番号 |
23550156
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
山浦 弘之 愛媛大学, 理工学研究科, 講師 (40314968)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | センサー / 燃料電池 / 触媒・化学プロセス |
研究概要 |
1. CuO担持酸化スズ材料の高感度化のために複合酸化物の調製を行った。調製した試料は、SnO2-In2O3、SnO2-ZnO、SnO2-TiO2の3種類について、組成および焼成温度を検討した。XRD測定より、Snと混合金属原子との比が8:2から6:4の範囲で約3-5nmの約1/4のSnO2結晶子サイズへと減少したものを調製できた。SnO2-ZnOについては、焼成前の前駆体の状態からSnZnOの結晶構造が確認でき、焼成で一度分解して微細なSnO2を形成したと推定した。2. SnO2-In2O3、SnO2-ZnOについて、CuOの担持を試み、測定条件とセンサ感度の最適化を行った。SnO2-ZnOについては、CuOによる感度の向上の傾向は見られたが、十分な感度は得られなかった。一方、SnO2-In2O3については、測定前の還元条件を100℃に低温化することで、1000 ppm COに対し測定温度135℃で感度約338という従来の数百倍の感度を得ることに成功した。この高感度化は、SnO2-In2O3の複合化に伴うSnO2の微粒子状態にCuOが高分散担持されたことによる反応場の増加によるものであると考えている。3. CuO担持SnO2を用いて、還元状態の評価をTPRと抵抗測定を組み合わせた測定を行うことでセンサ感度発現のメカニズムの検討を行った。SnO2については、水素による還元ピークに伴う抵抗変化が現れ、抵抗増加を伴うピークは、SnO2表面の還元によると推定した。さらに、CuOを担持した場合、CuOの還元に伴うピークがCuOの担持状態によって異なる結果が得られるとともにSnO2の表面の還元量がCuOが高分散した状態のときに大きく現れるとともに抵抗変化の増加を伴うことがわかった。このことは、今後のセンサ素子の測定条件やCuOの担持方法の最適化の指針とすることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画は、感度向上のための材料探索およびメカニズムの検討が中心であり、感度向上については、CuO担持複合材料を用いることで従来得られていないような高い感度を発現することを示すことができた。また、感度発現についてもCuOとSnO2の接合部分が感度発現に重要な役割をもつことを推定できた。まず、ベース材料として、SnO2、ZnO、In2O3およびこれらを組み合わせた複合酸化物の検討を行い、応答部分には、CuOを担持することでCOを検知することができた。素子構造について、再現性の検討については電極間距離を厳密にすることで素子抵抗の再現性を得ることができた。還元雰囲気のセンサ挙動としては、TPR測定と抵抗変化の同時測定を行うことで、CuOの分散状態と抵抗変化の関係を新たに見出し、検知メカニズムの解明につながる重要な結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方針としては、引き続きSnO2-In2O3系を中心にベース材料の検討とCuOの分散方法を最適化することで感度の向上を目指すとともに、実条件に近づけた雰囲気での安定性の測定や5-200 ppmの微量CO濃度での測定を行うことで実用センサ材料としての可能性を評価する。また、センサ材料の物性を分散状態の面から検討を行い感度の向上を目指す。また、還元雰囲気でのセンサ発現メカニズムについてさらに詳細な検討を行っていくことで、センサ感度向上の指針を確立する。1. センサ材料の調製およびセンサメカニズムの検討(山浦(研究代表者)担当)第二成分を担持した材料の調製およびポテンショ/ガルバノスタットを用いた交流インピーダンス測定の検討を行う。有望なセンサについて、研究室内のシフト反応触媒装置を用い出口ガスにセンサを設置し実ガスに近い条件でのCOモニタリング測定を行い、感度特性および安定性の評価を行う。研究協力者2. の結果から、応答メカニズムの検討を行う。必要に応じてXPS(借用)による電子的相互作用の検討を行う。2. センサ特性評価(学部生(研究協力者)担当)引き続きセンサ特性の測定を行う。また、センサ材料の物性を分散状態の面から検討を行い感度の向上を目指す。測定は、BET(借用)、レーザー粒子径測定装置(借用)、TEM(借用)測定などを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が大きいことについては、本年度は材料探索とセンサ感度測定が中心となって有望なセンサを見出したことおよび予定した備品の機器による検討が、購入前の既存の装置による測定を優先させることが感度発現のメカニズムの検討に必要であったことから大部分の金額を次年度で予定することとした。もっとも有望なセンサ材料について、還元雰囲気のセンサ挙動を明らかにするため設備・備品としてポテンショ/ガルバノスタットを購入し交流インピーダンス測定によるセンサ素子の還元雰囲気中での挙動を明らかにする検討を行う。残りの金額については、既存の装置または学内の装置を借用できるのでセンサ材料や測定ガスなどの消耗品の購入に充てることで、以下の測定を実施する。有望なセンサについて、引き続きセンサ特性の測定を行う。また、研究室内のシフト反応触媒装置を用い出口ガスにセンサを設置し実ガスに近い条件でのCOモニタリング測定を行い、感度特性および安定性の評価を行う。必要に応じてXPS(借用)による電子的相互作用の検討を行う。また、センサ材料の物性を分散状態の面から検討を行い感度の向上を目指す。測定は、BET(借用)、レーザー粒子径測定装置(借用)、TEM(借用)測定などを行う。
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