研究課題/領域番号 |
23550157
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
柘植 顕彦 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80179986)
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研究分担者 |
北村 充 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10313199)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ゲル 米国 欧州 |
研究概要 |
近年、ソフトマテリアルが多くの分野で注目されている。 その中でゲルは典型的なソフトマテリアルであり、最も注目されている物質群の一つである。 一方、我々はジケトン配位子がユーロピウム金属と安定な錯体を形成し、紫外光照射により非常に強い赤色発光を示すことを見出しているが、その際、アミド結合を含む配位子を用いた場合、興味あるゲル化挙動を確認した。 そこで、強い赤色発光という特性を有する錯体型のゲル化剤の創製を行うことを計画した。すなわち、錯体形成と水素結合形成を駆動力とした全く新しいタイプのゲル化剤の創製、及び赤色発光型ゲルの機能化について明確にする。 具体的には、錯体化と水素結合形成の二つを駆動力としたゲル化過程を調べた。まず、水素結合部位として、アミド基、及びウレア基を有する配位子の合成を行った。 一般に、ゲル化挙動は溶媒の種類、濃度、温度等の影響を受けることが知られていることから、ジケトン配位子の錯体化に伴うゲル化について、種々条件検討を行った。 具体的には、水素結合性の溶媒、極性溶媒、非極性溶媒等、あるいは、それらの混合溶媒を用いた場合のゲル化挙動を検討した。さらにゲル化濃度についても詳細に調べた。その結果、ある程度の長さ以上のアルキル鎖を有する配位子の錯体において、赤色に発光するゲルの形成に成功した。また、このようなゲル化は、錯体形成と水素結合ネットワーク形成の二つを駆動力としたものであることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、ソフトマテリアルを目指した種々の機能性ゲルが報告されている。 ある分子がゲルとして機能するためには、基本的には分子が三次元網目構造を形成する必要がある。その駆動力としては、主に物理的な相互作用、化学的な結合等を挙げることができる。また、ごく最近架橋点可動型のゲルも報告されている。 一方、錯体形成は、金属の周りに配位子が配位結合により集まることにより生じると考えることができる。そこで、本研究課題では、分子間の水素結合形成に加え錯体化を駆動力としたゲル化、すなわち三次元架橋網目構造形成について明らかにするとともに、それを活用した機能性材料の開発を計画した。このような錯体形成を主な駆動力としたゲル化については、一部報告されているもの、系統的な研究は全く行われておらず、非常に新しいゲル形成の方法論を提供するものであり、学術的な意味も大きい。 また、形成されたゲルは紫外光照射により強い赤色発光を示すことから、様々な応用が考えられ、機能性ゲルとしての優位性もある。さらに、カリックスアレーン類似の分子内空孔を形成していることから、ゲスト分子を選択的に取り込む可能性がある。すなわち、このような分子認識機能を有するゲル化剤の創製も行える。ここで提案している錯体構造を活用することにより、ゲル化の特性に加え、他の分子を識別できるホスト分子として機能し得る新しい系の構築が可能である。さらに、紫外光照射による強い赤色発光も示すことから、これまでにない独創的な機能性材料の開発につながるものと確信している。 このような計画の主要部分を占める基本的なゲル化剤の開発に平成23年度中に達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に得られたゲル化に関する基本的な知見を基に、得られたゲルについての特性について明らかにする。 まずは電子顕微鏡観察により、それらの繊維状構造などについての基本ゲル構造の情報を得る。ここで得られたゲルは、ユーロピウム錯体を基本構成単位としており、紫外光照射により強い赤色発光が期待できる。そこで、ゲル中での発光挙動について、溶液、固体の場合との比較検討を行う。このような特異的な強い赤色発光を示す特性と、これまで報告されている様々な機能性ゲルを組み合わせることにより、新規機能性ゲルの創出が可能であるものと思われる。 このように本研究で提案しているゲルの最も特徴的な強い赤色発光に関して、総合的な知見を得る。ついで無色透明なゲルに紫外光を照射することにより、ユーロピウム起源の強い発光を示すことから、多くの材料分野での新規機能性ゲルとしての活用法を見出す。構築された錯体は芳香環で囲まれた分子内空孔を持つことがわかっている、よって溶液状態、ゲル状態における内空孔を利用した分子認識挙動、及び、それに伴うゲル特性の変化等について詳細に検討する。 芳香族部位に囲まれた領域でのカチオン-π相互作用に基づく認識を考慮して、ゲスト分子として、例えばニトロソニウムカチオンのような無機カチオン、アンモニウム塩のような有機カチオン種を用いる予定である。さらに、このように分子が内空孔に結合した際のゲル化挙動、また、形成されたゲルについても、その特性を明確にする。
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次年度の研究費の使用計画 |
23度に得られたゲル化に関する基本的な知見を基に、機能化について研究を推進する。ゲルの特性、発光挙動を調べ、新規機能性ゲルとしての活用法を明らかにする。得られたゲルについての特性について明らかにする。まずは電子顕微鏡観察により、それらの繊維状構造などについての基本ゲル構造の情報を得る。 ここで得られたゲルは、ユーロピウム錯体を基本構成単位としており、紫外光照射により強い赤色発光が期待できる。そこで、ゲル中での発光挙動について、溶液、固体の場合との比較検討を行う。このような特異的な強い赤色発光を示す特性と、これまで報告されている様々な機能性ゲルを組み合わせることにより、新規機能性ゲルの創出が可能であるものと思われる。 このように本研究で提案しているゲルの最も特徴的な強い赤色発光に関して、総合的な知見を得る。ついで無色透明なゲルに紫外光を照射することにより、ユーロピウム起源の強い発光を示すことから、多くの材料分野での新規機能性ゲルとしての活用法を見出す。構築された錯体は芳香環で囲まれた分子内空孔を持つことがわかっている、そこで、溶液状態、ゲル状態における、その内空孔を利用した分子認識挙動、及び、それに伴うゲル特性の変化等について詳細に検討する。芳香族部位に囲まれた領域でのカチオン-π相互作用に基づく認識を考慮して、ゲスト分子として、例えばニトロソニウムカチオンのような無機カチオン、アンモニウム塩のような有機カチオン種を用いる予定である。さらに、このように分子が内空孔に結合した際のゲル化挙動、また、形成されたゲルについても、その特性を明確にする。 このような計画を遂行するために、研究費の大部分を化合物合成に必要な物品消費に充てる。その他、旅費、謝金として使用する。
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