研究課題/領域番号 |
23550158
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
美藤 正樹 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60315108)
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キーワード | 国際研究者交流(ポルトガル) / 磁性ナノ粒子 / 異方的ひずみ / 高圧力実験 / 構造解析 / 磁気測定 |
研究概要 |
本研究は、磁性ナノ粒子における異方的な表面構造の変化が引き起こす新規物性の探索を目指すものである。具体的には、メソ多孔質構造体中に合成された粒子を、構造体ごと圧縮することで、粒子レベルおよび格子レベルでの異方的構造変化を誘起し、その時の磁性変化を構造変化と共に追跡調査することによって、表面構造に起因する磁気特性を究明する。本研究は、これまでの合成中心の磁性ナノ粒子研究では特定が困難であった異方的な粒子収縮に関する実験的知見を与えるものである。 平成24年度は、孔径8nmのナノ細孔中に合成された反強磁性NiOナノ粒子の高圧力下構造解析を実施した。現時点で、研究対象にした粒子サイズは11nm-25nmに及び、実験は放射光施設で行った。また、比較対象として、バルク体の高圧力下結晶構造も実施した。 まず、バルク体において低圧力下で構造変化に関連する格子の膨張を見せることを発見した。これは平成23年度に11.4nmのナノ粒子で既に観測されていたことであり、これまでの長い研究の歴史を有するNiOで見落とされていた新事実である。また、このような素性の系において、ナノ細孔中で合成されたピーナッツ状結晶に歪みを加えると、この一時的な格子膨張を起こす圧力が低下することを観測した。実は、NiOはモット絶縁体として有名な物質であるが、電子相関が格子系に及ぼす影響についてはまだ未解明なところがあり、本実験結果がそれを解明する実験結果を提供する可能性は高く、大きな波及効果を期待させる研究である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は平均サイズ11.4nmのNiOナノ粒子の高圧力下構造解析を実施し、低圧力下での一時的な格子膨張を観測した。平成24年度はその現象のサイズ効果を調べるべく、バルク体および平均サイズ17.1nm, 24.5nmについても同様の実験を行った。まず、バルク体で一時的な格子膨張が立方晶から菱面体晶への変形を反映していることを突き止め、同時にそれを発現する臨界圧力がサイズに依存することを観測した。まだ、10nm以下についての実験を残しているが、着実な成果が得られている。 また、異方的歪み実験の対照研究として実施したFePtナノ粒子の静水圧力効果(J. Appl. Phys. 2013)や中空型マグへマイトナノ粒子の静水圧力効果(J. Magn. Magn. Mater. 2013)に関する学術論文を公表できたことも評価材料である。
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今後の研究の推進方策 |
NiOは反強磁性体を母体とする物質であり、ナノサイズ化されることで反強磁性体に一般的な2副格子構造が8副格子構造に変化することが理論的に指摘されている。実際、NiOナノ粒子では大きな磁気モーメントが発現する。また、この物質はモット絶縁体としても有名である。そこで、今後の研究の進め方として、強相関物理のナノ粒子版と言う側面に着目し、この興味深いNiOナノ粒子系に研究対象を絞る。既に、11nmより大きなサイズのNiOナノ粒子について磁性・構造の両面から圧力実験を実施しているが、平成25年度は平均サイズ10nm以下ののNiOナノ粒子に対して、放射光を利用した高圧力下構造解析を実施し、立方晶から菱面体晶への構造変形のサイズ特性の全貌を明らかにする。そして、培った一連の研究成果を学術論文として公表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の直接経費(前年度の繰り越し分も含む)の約80万円の内、約30万円を寒剤購入費(液体ヘリウム代)に充てる。また、また、高圧力下構造解析実験において高圧力を発生させる際に必要となるダイヤモンドアンビルの購入に約15万円を計上する。そして、上記の研究の成果を公表するために、学会参加のための旅費(約25万円)と論文掲載費(約10万円)を計上する。 なお、平成24年度の直接経費の所要額には、平成23年度の未使用額(繰越額)である約12万円が含まれている。この繰越は、平成24年度中に残金不足が理由で特殊加工のダイヤモンドアンビル(約15万円)を購入出来なかったため、平成25年度予算と合算することで所望のダイヤモンドアンビルを調達しようとしたためである。
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