前年度までの検討結果から、発光性イオン液体(PFCP-IL)とポリ塩化ビニル(PVC)から構成されるPFCP-IL/PVCゲルが、熱履歴センサー(光を感じて発光ずるプラスチック材料)として必要な高い視認性を持つことが明らかになった。本年度は、PFCP-ILの含有量およびPVCの分子量等を変化させることで、発光開始温度が制御されたゲルの開発を行い、PFCP-IL/PVCゲルを熱履歴センサーとしてより実用化に近いもの開発することを目的として検討した。その結果、PVCの分子量あるいはPFCP-ILの含有量を変化させたゲルフィルムをそれぞれ調製することで、90℃から140℃までの10℃間隔の加熱温度に対して感熱発光する5種類の透明フィルムの調製に成功した。この結果は、5種類のフィルムを熱履歴温度が知りたい材料に貼付すれば、その材料の熱履歴温度を発光強度により簡便に測定することができることを示しており、今回、熱履歴センサーとしての展開が期待できる結果を得ることができた。 さらに、外部応答刺激として、これまで検討してきた熱以外に、機械的圧力に着目し、調製したゲルへの伸縮運動による発光増強度の変化についても検討した。ガラス転移温度が低く、比較的粘弾性のあるポリブチルメタアクリレート(PBMA)との複合体(PFCP-IL/PBMA)において、2cm程度の伸縮運動を3回繰り返すと、繰り返し前後において、約3.5倍の発光増強が観測された。このことは、高分子鎖の機械的な運動によってもPFCP-ILの発光会合体の形成が促進されることを示しており、PFCP-IL/PBMAが発光をモニターした機械的刺激センサーとしても活用できる可能性があることが示された。
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