研究課題/領域番号 |
23550160
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
岡村 浩昭 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (30244221)
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研究分担者 |
蔵脇 淳一 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (10170078)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 金ナノ粒子 / シュガーボール / カルバ糖 |
研究概要 |
本研究の目的は、Au3+イオンの還元によるAuナノ粒子調製において、還元性安定化剤のミセル形成を利用した形状制御および表面修飾剤の配列制御を行うことである。H23年度は以下に示す3点について研究を実施した。 1.ミセル形成可能な界面活性剤型還元性安定化剤を2種類合成し、その濃度とAuナノ粒子生成速度との関係を検討した。その結果、還元性安定化剤の濃度が臨界ミセル濃度以上になると、Auナノ粒子の生成速度が劇的に向上することを明らかにした。これは、還元性安定化剤のミセル形成がナノ粒子生成に大きな影響を与えるという、事前の予想を裏付ける結果であり、大きな成果である。 2.上記1の結果を受け、研究計画を前倒しして単糖および二糖を含む還元性安定化剤を合成し、これを利用したシュガーボール型Auナノ粒子の調製を検討した。還元性安定化剤の合成経路に改善の余地は残されているものの、期待されたシュガーボール型Auナノ粒子を容易に得ることができた。また、得られたナノ粒子溶液の1H NMRスペクトルより、ナノ粒子表面には糖を含む還元性安定化剤のみが結合していることを確認した。 3.カルバ糖の効率的な合成経路について検討を行い、新しい環化付加反応を利用した方法を開発した。フェニルビニルスルホキシドがDiels-Alder環化付加反応におけるキラルジエノフィルとなりうることは以前から知られていたが、その反応性は低く、従来法では生成物を収率よく得ることは困難であった。申請者のグループは、独自に開発した3-ヒドロキシ-2-ピロンの塩基触媒Diels-Alder反応を改良し、Mg塩を触媒とする反応を検討したところ、高収率かつ高立体選択的に付加物を得ることができた。さらに、この化合物を出発原料として、生理活性カルバ糖の不斉合成を行い、2種の化合物の合成法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H23年度に行う予定であった還元性安定化剤のミセル化とAuナノ粒子生成との関係については、予期したとおりの結果を得ることができた。しかし、現在までの所、検討が完了しているのは2種類の還元性安定化剤についてのみである。当初計画されていた、キラルな還元性安定化剤をはじめとする4種類の化合物は、現在合成中である。近日中に検討を完了する予定であるが、当初計画からはわずかに遅れが生じている。 一方、シュガーボール型Auナノ粒子の調製とカルバ糖の合成については、当初計画を大幅に前倒しして進行している。 本研究は還元性安定化剤の合成を行う有機化学グループと、ナノ粒子溶液の各種スペクトル測定および電子顕微鏡画像の撮影などを担当する物理化学グループによって行われている。上述の遅れのために、H23年度は物理化学グループによる電子顕微鏡画像の撮影を行うことができなかった。 研究課題によって達成度に違いはあるものの、総じて順調に進行しつつあると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画通り、多様な構造を持った界面活性剤型の還元性安定化剤の合成を進め、これを用いたAuナノ粒子の調製を検討する。特に、キラルな還元性安定化剤について重点的に検討を進める予定である。また、H23年度中に行う予定であったナノ粒子溶液の電子顕微鏡画像の撮影を完了する予定である。 シュガーボール型Auナノ粒子を用いた研究は、より効率的な調製法を確立した上で、レクチンなどの生体分子との相互作用の検討を行う予定である。 カルバ糖の合成については、すでに検討を完了している。シュガーボール型Auナノ粒子の効率的な調製法が確立された後に、カルバ糖を含むシュガーボール型Auナノ粒子の調製を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画通り、消耗品費、旅費、その他に使用する予定である。設備備品費、謝金の支出予定はない。 H23年度の使用予定金額のうち、H24年度に使用する予定の金額は12,348円である。これは、H23年度の日本化学会第92春季年会への出張用旅費として使用予定であったが、直前に家族が死亡し、その葬儀のために出張を取りやめたために未使用となったものである。この金額については、H24年度の研究成果報告用の出張旅費として利用する予定である。
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