研究課題/領域番号 |
23550160
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
岡村 浩昭 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (30244221)
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研究分担者 |
蔵脇 淳一 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (10170078)
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キーワード | 金ナノ粒子 / シュガーボール / カルバ糖 / ミセル |
研究概要 |
本研究の目的は、還元性安定化剤を用いたAu3+イオンの還元によるAuナノ粒子調製において、ナノ粒子の形状制御および表面修飾剤の配列制御を行うことである。H24年度は以下の研究を実施し、成果を得た。 1.昨年度に確立したシュガーボール型Auナノ粒子の調製法を改良し、より効率的な合成法を開発した。さらに、上記の手法で調製したシュガーボール型Auナノ粒子について、光散乱光度計(DLS)による溶液中の粒径測定の結果および透過型電子顕微鏡(TEM)画像の検討から、Auナノ粒子の直径は約20~60 nm であること、溶液中では多数の粒子が集まり、約200~800 nm 程度の会合体を形成していることを明らかにした。 2.シュガーボール型Auナノ粒子の生成において、我々の開発した直接的な手法と、従来から用いられている段階的な手法(あらかじめ調製したAuナノ粒子に機能性分子を含むチオールを加えて結合させる方法)との比較を行った。その結果、従来法では機能性分子の固定化が不十分であり比較的不安定なAuナノ粒子しか得られないのに対して、直接法では安定度の高い粒子が得られることを確認した。さらに、直接法で調製したAuナノ粒子溶液とレクチンとの相互作用を検討したところ、Auナノ粒子溶液にレクチン溶液を添加すると速やかに沈殿を生じることから、両者が容易に結び付くことが確認された。 3.窒素を含む2-ピリドン誘導体を用いた新しい不斉環化付加反応を開発した。この方法を用いることで、光学的にほぼ純粋なビシクロラクタム誘導体を高収率かつ高立体選択的に得ることができた。さらに、この化合物を原料とした抗インフルエンザ薬タミフルの合成研究を行い、合成中間体のエナンチオ選択的合成を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミセル化を利用したAuナノ粒子の生成とシュガーボール型Auナノ粒子の調製については、ほぼ当初の計画通り順調に進行している。また、カルバ糖類縁体の合成についてもエナンチオ選択的合成法を開発することができ、H24年度までに3種類のカルバ糖およびカルバアミノ糖が得られており、満足すべき結果である。 一方、キラルなチオール誘導体の合成については、当初の計画を達成できていない。H23年度~H24年度までの検討では、得られた化合物はいずれも空気中で容易に酸化され、Auナノ粒子調製に利用することができなかった。 研究課題の一つについて、当初の計画を大きく変更せざるを得ないものの、その他の研究課題については当初の予定を達成しつつあり、おおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
キラルな還元性安定化剤の合成は一時中断し、その他の研究課題に注力する。 ミセル化を利用したAuナノ粒子の生成に関する研究を重点的に推進する。これまでに合成した非イオン性界面活性剤型の分子だけでなく、アニオン性およびカチオン性界面活性剤型分子を合成し、ミセルの性質の違いがナノ粒子の生成にどのような影響を与えるかを検討する。また、複数の界面活性剤様還元性安定化剤を組み合わせ、混合ミセルから複数種の分子で表面修飾されたAuナノ粒子の調製について検討する。 シュガーボール型Auナノ粒子については、レクチンとの相互作用の詳細な検討に加え、細胞毒性などの生物活性の確認を行う予定である。また、複数の糖を組み合わせた”アレイド・シュガーボール”の調製についてもあわせて検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画通り、消耗品費、旅費、その他に使用する予定である。設備備品費、謝金の支出予定はない。
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