研究概要 |
平成24年度は「水溶性銀食い分子」および「発色団を導入した銀食い分子」の開発に着手した. 1)「水溶性銀くい分子」を合成する方法を確立した.具体的には,芳香環側鎖にカルボキシル基を4個または2個導入した化合物を合成した.芳香環側鎖にカルボキシル基を4個導入した化合物に水中でAg+イオンを添加すると,サイクレン部位に補足された銀イオンを4枚の芳香環が包み込むことを,1H NMR滴定実験によって確認した.さらに,この化合物に水中で,様々な金属イオンを添加してUV-Visスペクトルを測定したところ,Li+, Na+, K+, Mg2+, Ca2+, Sr 2+, Ba2+, Co2+, Ni2+ イオンを添加してもスペクトルに変化はなかったが,Ag+を添加したときだけ,特異的にUV-Visスペクトルが変化した.一方,Pb2+とZn2+を添加したら,少しだけスペクトルに変化が見られた.Pb2+とZn2+の場合は,側鎖に導入したカルボキシルキがこれらの金属イオンに配位したことで微細なスペクトル変化を与えたと考えている.この結果は,銀くい分子の初めての応用例である. 2)「発色団を導入した銀くい分子」として,4枚の芳香環側鎖のうち,向かい合っている2枚の側鎖としてピレンを導入した化合物を合成した.この化合物に様々な金属イオンを添加して溶液中における蛍光スペクトルを測定したところ,特定の金属に対して選択的にスペクトルが変化することがなかった.一方,各金属の1:1錯体を単離し,それらの固体蛍光を測定したところ,Ag+錯体だけで特異的なエキシマー蛍光を示した.この配位子自身はモノマー蛍光を示したことから,ピレンどうしが互いに分子間で重なり合った構造をとっていると考えた.この構造はX線結晶構造解析によって支持された.この結果は,新たな光機能性材料へ展開できると考えている.
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