研究課題/領域番号 |
23550165
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
水谷 義 同志社大学, 理工学部, 教授 (40229696)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 単分子膜 / ポルフィリン / 有機-無機複合体 / アルコール / メタル化 / 吸着平衡 |
研究概要 |
金属酸化物表面に安定な有機分子の単分子膜を形成する方法として、珪酸エステルの共有結合を利用した方法について詳細に検討した。今年度は、有機分子に導入した水酸基の数とその導入位置が、(1)二酸化ケイ素との結合反応速度に与える効果、(2)生成した単分子膜の安定性に与える効果を明らかにするために、5種類のポルフィリンアルコールを合成した。すなわち、水酸基を1つ、2つ、4つもつポルフィリンであり、水酸基を2つもつポルフィリンについては、水酸基を分子の同じ側に導入したシス体と反対側に導入したトランス体をそれぞれ合成した。また、シス体については、水酸基と反対側に長鎖アルキル鎖を導入した誘導体も合成し、これらとシリケートガラスとの固体―固体反応の反応速度を調べた。その結果、(1)反応速度は、水酸基の数が増えると増大すること、(2)アルキル鎖を導入したシス体はもっとも反応性が高いことが明らかとなった。次に、ガラス上に生成した有機単分子膜の安定性を比較するために、1 M 塩酸に浸漬し50℃で加熱し脱着速度を比較した。脱着速度から、単分子膜の安定性は、シスアルキル誘導体 > 水酸基を4つもつもの ~ シス位に2つもつもの > 水酸基1個のもの~トランス位に2個もつものという順になった。したがって、単分子膜の安定性は、シス位に2つの水酸基をもつ構造が重要であることが示された。以上のように、Si-O結合による有機-無機界面の形成にもちいる分子設計についての指針が得られた。 このようにして得た化学的に安定な単分子膜は、固体上でさらに化学修飾が可能であることを実証した。すなわち、この単分子膜を酢酸亜鉛の溶液と接触させると、ポルフィリンへの亜鉛イオン挿入反応が進行することが紫外―可視吸収スペクトルで確認でき、その反応速度の亜鉛濃度依存性から、クーロン力を駆動力とする吸着平衡の存在が速度論的に実証できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的である有機物に導入した官能基と無機表面との反応速度との系統的な検討が予定通り行うことができ、今後の分子設計の指針が明らかになるとともに、化学的に安定な単分子膜が合成できたことにより、固体表面上での化学修飾反応も可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
無機固体への有機分子の修飾反応に関して、有機合成的な分子設計が有効であることが確認できた。これによって、合成化学的な方法でいろいろな分子の設計を行い、固体表面への吸着反応を系統的に検討する方針で進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画通り、有機合成を行う試薬、ガラス器具、分析のための試薬などに研究費を使用する。
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