シリケートガラスおよびシリカゲルの表面上のシラノール基とポルフィリン発色団をもつアルコールとの熱的な縮合反応による有機-無機複合化について検討した。いろいろな構造をもつポルフィリンアルコールを9種類合成し、シリケートガラスにスピンコートし120~200℃で加熱処理することで、ポルフィリンアルコールをシリケートガラス上に結合させた。シリカ上に結合したポルフィリンアルコールの酸および塩基触媒による加水分解反応の速度を調べることで、複合体の安定性とアルコールの構造との関係を系統的に調べたところ、(1)ビスホモトリス構造をもつアルコールが加水分解に対して安定であること、(2)長鎖アルキル鎖をもつアルコールが、加水分解に対して安定であること、(3)3級アルコールは、塩基触媒の加水分解に対して1級アルコールに比べて20倍安定であることを明らかにした。長鎖アルキル基をもつポルフィリンアルコールを結合させたガラスは接触角測定から、疎水的であり、水の反応点への浸入を阻害しているために、加水分解が起こりにくいと考えられる。また、O-18の水を用いた加水分解反応を検討することによって、(1)アルコールとシリカは共有結合で結合していること、(2)1級アルコール、3級アルコールの塩基加水分解、1級アルコールの酸加水分解は、Si-O結合が開裂するのに対して、3級アルコールの酸加水分解ではC-O結合が開裂することが明らかになった。したがって、塩基加水分解に対して3級アルコールが安定であるのは、3級アルコールの立体障害によって水のケイ素への求核攻撃が阻害されているためであると考えられる。また、O-18でラベル化したポルフィリンアルコールとシリケートガラスとの反応を利用し、ポルフィリンアルコールとシリケートガラスとの反応は、1級、3級アルコールともアルコールの酸素がケイ素を求核攻撃する反応であることを明らかにした。
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