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2012 年度 実施状況報告書

膜埋込金属錯体による立体異性体の単離

研究課題

研究課題/領域番号 23550166
研究機関関西大学

研究代表者

矢島 辰雄  関西大学, 化学生命工学部, 准教授 (40434823)

キーワード立体異性体の選別
研究概要

研究計画に基づいて、まず三脚型配位子の設計を行うため、はじめにトリス(2-ピリジルメチル)アミン (TPA)誘導体である、光学活性 1-(N,N-ビス(2-ピリジルメチル)アミノ)-エチル-2-ピリジン (MeTPA)の合成を行った。光学活性 MeTPAを合成するために、合成中間体である 1-アミノエチル-2-ピリジン (aepy)を光学分割し、光学活性 aepyから光学活性 MeTPAを合成する方法と、ラセミ MeTPAを合成し、光学分割により光学活性 MeTPAを得る方法を検討した。両方法のうち、ラセミ MeTPAを経る合成法の方が収率はよいが、それでも 15%程であった。
また、光学活性三脚型配位子と同様の効果を持つ配位子として、L-ヒスチジン誘導体である N-(1-メチル-3-オキソ-3-フェニル-1-プロペン-1-イル)-L-ヒスチジンメチルエステル (BMVH)を合成し、HMVHとその銅(II)錯体の結晶中における構造を、X線結晶構造解析から決定した。 Cu(II)-BMVH錯体では、BMVHが三座で銅に配位していることから、残りの配位座にアミノ酸が配位でき、またヒスチジンの α位の立体配置により、配位したアミノ酸の選別が可能と予想された。そこで、この BMVHの銅(II)錯体を用いて、様々なラセミアミノ酸の光学分割試験を行った。(RS)-2-アミノ酪酸 (ABA)を Cu-BMVH錯体により処理したところ、光学純度 49%の (R)-ABAが得られた。また操作温度により、得られる ABAの立体配置が異なる現象も見られた。
さらに、立体選択的効果が大きいと思われる配位子として、プロリン誘導体である N-(ピリジルメチル)-L-プロリン (PMP)を合成した。この PMPは銅(II)イオンと1:1錯体を形成することから、さらにアミノ酸が配位できると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

研究の目的は、一つの立体異性体を選択的に取り出す膜埋込型金属錯体の開発である。昨年度に引き続き、その根源となる金属錯体の設計を行ってきたが、数種類の配位子の合成にとどまっていること、また収率が低いため錯体の形成に至っていない配位子もあり、ラセミアミノ酸の光学分割試験を行ったものは未だに一種類のみである。さらには、これらの金属錯体の膜への親和性の検討は行っておらず、もっぱら溶液中での光学分割試験のみであることから、今後は早急に膜への取り込みを試験しながら、それぞれの錯体の誘導体を合成し、膜への親和性を増すように配位子の調整を行い、実際に膜埋込型金属錯体として立体異性体の選別が行われるか検討する必要がある。

今後の研究の推進方策

銅(II)錯体の形成が確認された PMPをさらに検討し、ラセミアミノ酸の分離が可能か検討を行う。また、光学分割能が確認された L-ヒスチジン誘導体 (BMVH)とともに、膜に親和性を持たせるように構造を調整した金属錯体を用いて、膜への取り込みを試験する。
また、収率が低く、合成の検討段階にある光学活性 TPA誘導体 (MeTPAなど)ならびにL-ヒスチジン誘導体の合成では、次年度より研究分担者として参加いただく白岩正氏と協力し、収率の良い合成経路を確立し、光学活性体選別能を試験する。成績の良いものから膜への親和性を上げるように誘導体化を行い、PMPならびにBMVH誘導体と同様に膜による光学分割試験を行う。

次年度の研究費の使用計画

今年度は、錯体の膜への取り込みの検討が行えなかったために、これらの検討にかかる研究費として 151,560円を次年度に繰り越した。このため次年度は、この繰越金を今年度の物品費と合わせて主に、実験に必要な、試薬、ガラス器具の購入に充てる。旅費は、現在の研究成果について討論を行うため、国際生物無機化学会議 (フランス)への出席に当てる予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2012

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] 銅(II)三元錯体を用いた DL-アミノ酸の光学分割2012

    • 著者名/発表者名
      夏 博・木村真規子・松本寛史・矢島辰雄・白岩 正
    • 学会等名
      第62回錯体化学討論会
    • 発表場所
      富山大学, 富山
    • 年月日
      20120921-20120923
  • [学会発表] Stereochemical Selectivities of Optically Active Amino Acids Using Ternary Cu(II) Complexes Containing Histidine Derivatives2012

    • 著者名/発表者名
      Tatsuo Yajima, Hiroshi Matsumoto, Makiko Kimura, Ayaka Uno, Tadashi Shiraiwa
    • 学会等名
      11th European Biological Inorgaqnic Chemistry Conference
    • 発表場所
      Granada, Spain
    • 年月日
      20120912-20120916
  • [学会発表] Synthesis and Optical Resolution of (RS)-a-Alkylserine2012

    • 著者名/発表者名
      浅野晃司,尾縣秀俊,矢島辰雄,白岩 正
    • 学会等名
      Symposium Molecular Chirality, ASIA 2012
    • 発表場所
      九州大学, 博多
    • 年月日
      20120517-20120518

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公開日: 2014-07-24  

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