研究課題/領域番号 |
23550168
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
檀上 博史 甲南大学, 理工学部, 准教授 (70332567)
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キーワード | 超分子ポリマー / 分子接合素子 / 分子認識 / 金属ナノ粒子 / 基板修飾 |
研究概要 |
環状スピロボラートを用いた機能性ゲスト分子内包型ポリマー作製と、その基板表面固定化について検討を行った。ナフタレン環6位にホモアリル基を導入した分子接合素子をイリジウム(III)錯体と共存させることであらかじめ超分子ポリマーを作製し、ついでGrubbs触媒を用いたオレフィンメタセシスにより、隣接する分子接合素子同士を共有結合的に重合させ、ゲスト分子を連続的に内包したピーポッド型ポリマーを作製した。しかしこのものは溶解性に乏しく、各種構造評価が困難であったため、次にナフタレン環4位に長鎖アルキル基を有する置換基を導入し、同様の検討を行った。その結果クロロホルム、THFなどの有機溶媒に可溶な高分子を得ることができた。このものは超分子ポリマーとは異なり、GPCによる分子量評価が可能であった。それによると数平均分子量にして約9万程度の分子量をもつ高分子であることが確認された。これらをグラファイト基板上にスピンコート法により展開し、その様子をAFMにより観察したところ、剛直なポリマー構造に由来する網目状構造が確認された。また断面プロファイルによると、この網目構造はほぼ一層のポリマーにより構築されていることも示唆された。この他電気的中性の機能性ゲスト分子に対する分子接合素子として、スピロオルトカルボナート型のツインボウル型シクロファンも新たに合成し、フラーレンに対する分子接合能評価を行った。その結果フラーレン二分子を表裏二面で同時認識する様子が結晶構造解析より明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
基板およびナノ粒子表面修飾のため、あらかじめ機能性分子を内包した一次元連鎖構造を作製し、これを固定化する方策を計画した。第一段階である機能性分子内包型ポリマーについては効率よく作製できることが確認され、また種々の構造解析も円滑に行うことができた。一方で当初の計画にある、段階的に基板上に自己組織化膜を作製することについては、均一な自己組織化膜の構築が確認されず、今後さらなる検討を要する。
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今後の研究の推進方策 |
上記機能性分子内方型ポリマーの末端に残留するホモアリル基を利用した基板表面固定化や、単純にポリマー材料として基板表面にコーティングする手法などを確立することで、表面修飾法としての一般性を獲得するための検討を行う。また得られた基板およびナノ粒子の物性評価について、主に分光学的、電気化学的手法および顕微観察的手法を用いて行う。一方基板上での自己組織化膜作製については、今後チエニル基を有する分子接合素子を合成することで、アンカー基の基板に対する相互作用の強さを調節し、分子接合素子の基板上での自己組織化挙動を促進させる検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
各種分子接合素子およびナノ粒子の合成に必要な試薬、および各種基板に加え、走査プローブ顕微鏡(SPM)のプローブやサイクリックボルタンメトリー用電極等の構造および物性評価に必要な消耗品を調達する必要があることから、これらの購入を予定している。また研究成果を公表するための学会参加に係る費用も計上する予定である。 なお分子接合素子の基板上への固定化に関する検討が途中段階であり、現在分子接合素子へより効果的な置換基を導入する検討を行っていることから、SPM観察に係る消耗品の継続的な購入は本年度未使用の予算の中で執行する予定である。また分子接合素子のさらなる構造最適化に係る有機合成用試薬および消耗品の購入についても、次年度での合算分に含む予定である。
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