研究課題
我々は,有機伝導体α-(BEDT-TTF)2I3塩の電荷秩序が反転対称性を破る強誘電性転移であることを明らかにし,電子型強誘電現象の典型例として注目している。本研究では,強誘電体の本質的特徴として重要な自発電気分極の存在の検証とその外部電場依存性を調べるために,関連物質の測定に対応させた誘電率測定の計測系を構築し,さらに試料の薄膜化して強電場下での誘電応答を調べることを目的に立案した。しかし,関連物質中でもっとも絶縁ギャップが大きいα'-(BEDT-TTF)2IBr2塩の単結晶を用いて予備的測定を行ったところ残留電荷による外部電場効果が大きく,真の誘電率観測が困難であることが判明した。そこで,周波数依存性にはいったん目を瞑り,電気分極の直接観測を行うべく焦電流測定の測定を試みた。その結果,本年度の研究により実際に焦電流が検出され,巨視的電気分極の発生が確認された。電子型強誘電体の電気分極は伝導電子が担っておりイオンによって分極する従来の強誘電体とは異なる性質を示す可能性があるが,電子位置の不定性のためこれまで分極特性は未知であった。このことは,電子の位置不定性こそが電子強誘電体の特徴の本質であることを示唆しており,本研究により電気分極の定量が可能となることで理論研究も刺激し,電子型強誘電体の特性理解が進むと考えられる。
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Physical Review B
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