研究課題/領域番号 |
23550171
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
林 宣之 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所食品分析研究領域, 主任研究員 (40294441)
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キーワード | 分子認識 / 味覚センサー |
研究概要 |
レセプター分子構造を有する味覚センサーをフラグメント集合方式に基づいて開発する方法論を確立するために、苦味物質をセンシングするための人工レセプター分子に関しては、前年度までに絞り込んだ分子構造を芳香環ごとに3つのフラグメント分子に分割し、金薄膜上へ固定するための結合部を有する化合物の合成を行った。一方、うま味を呈する物質をセンシングするための人工レセプター分子に関しては、まず、フラグメント構造へ分割する以前のレセプター分子全体を合成し、標的分子に対するその複合体形成能力を調べた。実際の標的分子としては、酸性アミノ酸(グルタミン酸、アスパラギン酸)を想定した。水中においてこれらの化合物を認識する際に、主な分子間力として非極性相互作用は期待できないため、比較的強い静電的相互作用を利用する戦略とした。水中でルイス酸性を保持するスカンジウムイオンとルイス塩基性を持つ配位子を組み合わせた有機金属錯体を用いることにより、アミノ酸のカルボキシル基とアミノ基の同時認識を可能にした。リガンドの構造を変化させることにより、5つの新規錯体を合成した。これらは全て難水溶性であったため、アミノ酸水溶液へ添加後、その懸濁液を激しく攪拌し、上澄みからのアミノ酸の除去率を調べることで、各金属錯体(レセプター)のアミノ酸への親和性を評価した。これらの錯体すべて、中性アミノ酸に対しては何の作用も示さないが、それらの中の幾つかは酸性アミノ酸を吸着することが明らかとなった。さらに、それらの錯体がアルギニン等の塩基性アミノ酸を認識することも判明した。 これらの研究成果は、レセプター機能を有する味覚センサーの効率的構築に有益であるばかりでなく、親水性物質の水中での分子認識の新たな方法論開発に重要な意味を持つものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、苦味物質をセンシングするための人工レセプターに関してはフラグメント分子の合成を行い、うま味物質については、新規人工レセプター分子を開発したため。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、平成24年度に引き続いて、うま味物質をセンシングするための人工レセプター分子の合成と親和性の評価を行い、適切なレセプター分子構造を解明する。苦味物質のセンシング系に関しては、フラグメント化合物の、金薄膜上への固定化に着手する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題の推進のため、次年度の研究費は、交付申請時の計画通り、物品費、謝金、その他に使用する。なお、次年度使用額392,846円は、研究費を効率的に使用して発生した残額であり、今年度の研究において新たに見出された課題の解明を目指し、次年度に請求 する研究費と合わせて研究遂行のために使用する。
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