研究課題
本研究はπ共役系有機分子について、未踏査である可視光短波長領域(400~580 nm)において二光子吸収スペクトルの測定を行い、強い二光子吸収特性を持つ可能性を実験的に検証し、その二光子吸収遷移が生じる理由を電子構造から明らかにするとともにその応用の可能性を探索することが目的である。前年度までに、分岐型フェニルエチニレン誘導体の580nm以下の短波長域の二光子吸収スペクトルの測定を行なったところ、580nmより長波長では数百GM以下であった二光子吸収断面積(分子1個あたりの二光子吸収強度)が、より短波長になるにつれて増大し、400nmにおいて20,000GMと非常に強い二光子吸収を示すことを見出した。また同分子系についての第一原理量子化学計算を行い、二光子吸収が強い励起状態が高励起状態にあることが示された。また、やはり高い対称性を持つ分子構造の環状オリゴフェニレン系化合物やそれを発展させたナノケージ化合物についても研究を行い、環状オリゴフェニレンが二光子吸収誘起の反応を生じることを明らかにしてきた。これら短波長領域の二光子吸収スペクトル測定を効率よく進めるため、同波長域の標準試料として市販の高純度ワイドバンドギャップ半導体であるGaNを選択してその評価も進めて来たが、予想外に試料の光学特性がGaNの生産ロット毎に大きく異なることが判明した。これは微量の不純物によるものと考えられる。この問題の解明に時間を要したため当初の計画を1年延長し、H26年度はこれまでに見出して来た高励起状態への強い二光子吸収性の応用展開を図るべく、その二光子微細光造形の可能性を調べた。研究の効果的な進展を図るため、光造形について造詣の深い海外の専門家を短期招聘し、実験指導と現場での議論を行った。その結果、高励起状態への遷移を用いることで従来の開始材濃度よりも1桁薄い濃度で微細光造形に成功した。
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