研究課題/領域番号 |
23550175
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中田 耕 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 助教 (90250414)
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キーワード | 硝酸 / 還元 / 電気化学 / 赤外 / 貴金属 / 白金 / パラジウム / 合金電極 |
研究概要 |
本研究では,種々の疾病の原因となる飲料水中の硝酸イオンを電気化学的に還元して無害化する電極を設計するために,電気化学的測定と連動した表面増強赤外分光法によって,貴金属およびそれらのスズ修飾電極での硝酸イオンの吸着状態,電位による吸着量の変化,特にスズが誘起する還元されやすい吸着状態はどのようなものであるかを分析,解明し,これらの知見を基に新たな機能性電極を設計することを目的としている.さらに,より実用性の高い膜電極を用いたシステムへ応用を図ることについても考慮している. 平成24年度は前年度に引き続き,主として,電気化学的測定と連動した表面増強赤外吸収スペクトルの測定から,パラジウム,白金,およびスズ修飾パラジウム電極のN-O結合解裂能力と白金の水素化能力の兼備を期待したパラジウムー白金合金電極について,これらの電極およびこれらをスズで修飾した電極を用いて硝酸イオンの吸着状態に関する知見を得た. パラジウムー白金電極では,1種類のバンドのみが観測され,bidentate型に吸着した硝酸イオンのN=0伸縮振動によるバンドであると帰属された.また,電極のパラジウムの組成の増大に伴って,bidentate型に吸着した硝酸イオンのバンドが高波数側へ移動することが観測された.パラジウムー白金合金電極では,PdPd,PdPt,PtPtの3つの吸着硝酸イオンが予想されるが,観測れたバンドはこれら3種類の平均であると考えられる.観測されたバンドが,bidentate型吸着硝酸イオンのN=0伸縮振動によるバンドである所から,パラジウムの割合の増大に伴って,N上の正電荷が増大し,N=0の結合が強くなったものと考えられる.即ちパラジウムの割合の増大によって硝酸イオンは,より還元されやすい状態になっていることが明らかになった.これは電気化学的測定による結果と一致している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
パラジウムー白金電極を用いて,その組成を連続的に変化させることによって,bidentate型吸着硝酸イオンの場合,N上の正電荷の増大が,電極表面に吸着した硝酸イオンの還元されやすい状態と符合していることが明らかになった.スズの修飾によって硝酸イオン還元活性が増大することについても,スズの正電荷がN上の正電荷の増大に寄与していることが予想される.これついては,白金電極を用いてスズ被覆率を変化させた場合の一連の赤外吸収スペクトルの測定によって明らかにしつつある.このように,赤外分光法から見た還元されやすい状態にある硝酸イオンについては明らかにすることができた. これらの研究結果について,3件の学会発表を行った.現在,パラジウムー白金の合金電極,ロジウム電極の結果をまとめて,学会誌への投稿論文を執筆中である.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果に基づいて,現在,パラジウム,白金,パラジウムー白金の合金,ロジウムー白金の合金およびそれらのスズ修飾電極を用いて,硝酸イオンの還元活性,電気分解による還元生成物を調べている.赤外分光法により,還元されやすい硝酸イオンの特徴は明らかになったが,それをどのように電極表面に創り出すかは,明らかではない.また,今の所,合金を用いて期待した様な協同効果は得られていない.このような点を踏まえ活性と窒素選択性の両方の観点から,硝酸イオン還元に適した電極界面を設計する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は,ほぼ順調に予算を使用したが,経費の節減に努めた結果58570円の残金が発生した.残金は,電極作製用の金,白金,ロジウム,ルテニウム等の貴金属試薬の購入費に使用する予定である
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