研究課題
本研究は、高度好塩性古細菌由来の耐塩化酵素を超臨界二酸化炭素中における触媒として使用し、機能性オリゴ糖を合成することを目的とした。研究達成のために、まず耐塩化酵素にアミノ酸置換を行ない超臨界二酸化炭素中においても機能する酵素を作製し、さらに作製した酵素を超臨界二酸化炭素中に用いて機能性オリゴ糖を合成することを計画した。なお、耐塩化酵素には研究者が見出した高度好塩性古細菌由来キチナーゼ(以後、ChiN1と略する)を用いることとした。研究者は既にChiN1が分子表面に多量の酸性アミノ酸を有し、一方で塩基性アミノ酸は極めて少ないことを明らかにしている。この性質により、耐塩化酵素であるChiN1は超臨界二酸化炭素中におけるオリゴ糖合成酵素として、超臨界二酸化炭素中でも失活することはなく機能すると推察した。平成24年度は、ChiN1のさらなる耐塩化のためのアミノ酸置換箇所となる分子表面の塩基性アミノ酸(リシン残基)をアラニン残基に置換した変異体を作製し、酵素化学的性質検討を行った。その結果、取得できたいずれの変異体においても野生型に比べて耐塩性の向上は認められなかった。平成25年度は、リシン残基をアラニン残基に置換した変異体を更に増やし、平成24年度に作製した変異体とともに性質を調べた。その結果、いずれの変異体も変異導入による活性の低下は認められなかった。一方、ほとんどの変異体がジメチルスルホキシド(DMSO)に対する耐性が向上していることが明らかとなった。一方、野生型ChiN1の超臨界二酸化炭素中における安定性を調べたところ、超臨界二酸化炭素中における失活はわずかであり、高い安定性を有していることが明らかとなった。
3: やや遅れている
平成25年度は、リシン残基をアラニン残基に置換した変異体を更に増やし、平成24年度に作製した変異体とともに性質を調べた。当初は、その結果を踏まえて、超臨界二酸化炭素中におけるキチンオリゴ糖合成を行う予定であった。しかしながら、変異型酵素の有機溶媒耐性を調べたところ、新たな知見が得られたため、詳細な性質検討を行った。そのため、研究目的の達成がやや遅れることとなった。
今後は、カラムクロマトグラフィーを用いて、作製した変異体を精製する。精製酵素を用いて、超臨界二酸化炭素中における安定性を評価し、野生型酵素と比較する。そして安定性が向上した変異体を用い、超臨界二酸化炭素中でのキチンオリゴ糖合成を行っていく。また、安定性が向上した変異体の変異箇所を組み合わせた変異型酵素も作製し、高い超臨界二酸化炭素耐性を有する酵素を作製していく。
平成25年度は、リシン残基をアラニン残基に置換した変異体を更に増やし、平成24年度に作製した変異体とともに性質を調べた。当初は、その結果を踏まえて、精製酵素を用いた超臨界二酸化炭素中におけるキチンオリゴ糖合成を行う予定であった。しかしながら、変異型酵素の有機溶媒耐性を調べたところ、新たな知見が得られたため、詳細な性質検討を行った。そのため、酵素の精製には至らず、精製に必要な器具を購入しておらず、次年度使用額が生じた。今後は、作製した変異体を精製し、超臨界二酸化炭素中でのキチンオリゴ糖合成を行っていく。そのために、酵素精製に必要な器具(カラムクロマトグラフィー等)を購入する予定である。また、キチンオリゴ糖分析のための、カラムクロマトグラフィー等も購入し、研究を進めていく。
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