研究課題/領域番号 |
23550181
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
米村 俊昭 高知大学, 教育研究部総合科学系, 教授 (90240382)
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研究分担者 |
小澤 智宏 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70270999)
上田 忠治 高知大学, 教育研究部総合科学系, 准教授 (50294822)
松本 健司 高知大学, 教育研究部総合科学系, 助教 (30398713)
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キーワード | 環境対応 / 複合材料・物性 / 合成化学 / イオン結晶 / 光学活性 / ハイブリッド化合物 |
研究概要 |
今回のテーマは,光学活性を有する環境応答性金属錯体の開発を目指し,キラル反転反応を特定の部位に,いかに効率よく誘起するかについて,分子レベルで設計,合成するとともに,そのシステムを用いた機能発現に焦点をあてる。本研究では,組織化反応を行う上で有用となる16族元素として硫黄および酸素原子を含む二あるいは三座配位が可能な配位子を用い,単核錯体を原料とした異種の金属あるいは金属錯体との間で形成される多核錯体の立体選択的合成を試みる。 昨年度からの継続として,配位子としては光学活性な錯体を合成できること及び溶液中で分子内あるいは分子間の水素結合が形成可能なメルカプト酢酸,メルカプトプロピオン酸に加えて,L-システインメチルエステル(L-cysMe)やL-システインエチルエステル(L-cysEt)を用いた。昨年に引き続き,L-cysEt単核錯体と種々のコバルト(III)錯体との反応を行ったところ,様々な生成比で光学活性な三核錯体を合成できることがわかった。 さらに今回は,メルカプト酢酸,メルカプトプロピオン酸を用いた錯体の光学分割を行うことにより,光学活性な単核錯体を合成するとともに,立体特異的な集積型多核錯体の合成法に関する新規実験を行った。単離した単核錯体は,可視-紫外吸収・赤外吸収・NMRスペクトルおよび元素分析等に基づいて構造決定を行ったのちに,それらのCDスペクトルを測定することにより,立体化学的,分光化学的性質を明らかにした。メルカプトプロピオン酸錯体では,4つの異性体(ΔR,ΔS,ΛR,ΛS)を分離することができ,スペクトルを比較したところ,これまでに報告されているチオラト錯体やアミノ酸錯体と同程度のCD強度を示したのに対して,加成性に基づいて計算した隣接効果の示すCD強度が顕著に大きくなるという興味深い結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究二年目として,新規なハイブリッド錯体の立体選択的または用いる化合物により様々な生成比で光学活性な三核錯体を合成する方法を見出すことができた。キラリティの判定をより簡便にできる二核錯体の生成が困難であったことから,当初の計画を変更したが,その代わりに立体特異的な集積型多核錯体の合成法についての適用範囲を大幅に拡張することが可能となった。 研究内容の一部は,日本化学会の春季年会や錯体化学会討論会等で発表するとともに,アジア化学会議でも発表する予定であることから概ね順調に進んでいると判断できる。 さらに,光学活性なチオカルボキシラト錯体の特異なCD挙動を見出すことができたことから,最終年度には新たなキラリティ増殖反応へと発展することができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
多核錯体形成時における電子移動と立体特異性との関連について明らかにすることを目的として,種々の反応場における立体特異的な合成を検討し,合成法を確立する。前年度の研究成果をもとに,反応場が立体選択性に及ぼす影響に注目しながら,キセノン光源を使用した光誘起不斉反応について検討し,不斉反転がどのような波長領域で起こるかについても検討することで,キラル反転メカニズムの解明の手がかりを得る。 さらに,グラフト重合により導入したエポキシ基にL-システインを付加した光学活性な多核錯体の各種物性を明らかにするとともに,抗菌・防かび性能についても評価する。抗菌-防かび性にどのような要因が大きく寄与するかについて,立体構造(不斉を含む)や電子状態などに注目した系統的な解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
【当該研究費が生じた状況】 平成24年度の計画に基づく経費執行において,研究費に若干の残額が生じた理由は,昨年に引き続き研究分担者が長期(1-2ヶ月)の外国出張を行ったために,スペクトル測定の一部を次年度に行う必要が生じたことによるものである。 【平成25年度請求の研究費と遭わせた使用計画】 次年度には上記の点を補い,その他は当初の予定通りの使用を計画している。
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