研究概要 |
海水中で、良好な界面物性が保持できる分解性両親媒性化合物を創製することができれば、海洋事故に使用する際、環境負荷の低減が期待できる。そこで、親水基には糖などの天然物を有する海水中で使用できる分解性非イオン両親媒性化合物の創製とその機能に関する研究を行った。 まず、タイプ1として、果実などの各種植物中に遊離酸または塩として存在する酒石酸と長鎖ケトンをトルエン中、酸触媒存在下、脱水縮合反応させ、1,3-ジオキソラン環を有する中間体を合成した。続いて中間体と糖(ショ糖、ラクトビオン酸)を炭酸カリウム存在下、DMF中でエステル交換反応を行い、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的物を得た。 次に、タイプ2として、酒石酸ジエチルとヨードオクタンをDMF中で水素化ナトリウムを加えて、アルキル化することによりエステル型中間体を合成した。その中間体とショ糖を炭酸カリウム存在下、DMF中でエステル交換し、中性シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的物を得た。 そして、それらの基本的界面物性(曇点、表面張力、起泡力)を測定して対照界面活性剤(通常のエトキシレート界面活性剤や食添用シュガーエステル)と同等以上であることを明らかにした。また、人工海水で測定した結果も同様であった。植物油に対する乳化力は、対照界面活性剤とほぼ同程度であったのに対し、人工海水中では、上回る結果となった。重油に対する乳化・分散力においては、市販の油処理剤と同程度であることがわかった。化審法に規定された方法に準じて生分解度試験を行った結果、これらの分解性界面活性剤の4週間後の生分解度は60%以上であり、通常型の界面活性剤よりも優れていた。また、重油の生分解性を検討した結果、これらを添加することで生分解性の向上が見られた。
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