研究概要 |
本研究の目的は、作物体内への農薬浸透移行過程を植物が生きたままの状態で計測する分析システムの開発であり、本年度は、土壌施用剤として広く用いられているアセタミプリド(農薬)に、ESR活性なスピンプローブ部位を持たせた分析ツールであるアセタミプリドミュータントを合成した。アセタミプリドミュータント―農薬部位の合成―出発物質である2-クロロ-5-クロロメチルピリジン(1)にGabrielアミン合成を行い、2-クロロ-5-アミノメチルピリジン(2)を収率84%で合成した。その後、アミノ基をBoc保護し、プロパルギルブロミドと反応させることでリンカー部位であるアセチレン基を導入した。その後、脱保護を行いN-((6-クロロピリジン-3-イル)メチル)-2-プロピン-1-アミン(3)を3段階、47%収率で合成した。アセタミプリドミュータント―スピンプローブ部位の合成―スピンプローブ部位である1,1,3,3-テトラエチルイソインドリン-2-オキシル誘導体(4)は、出発物質であるm-アニス酸(5)を臭素化した後、カルボン酸部分をエステル化し、続くGrignard試薬による付加反応を行うことで、3-(2-ブロモ-5-メトキシフェニル)ペンタン-3-オール(6)を得た。次に、硫酸-酢酸混合溶媒を用いて脱水し、オレフィン(7)とした後、ブチルリチウムを用いてホルミル基を導入した(5段階、70%)。ホルミル基をオキシムへと変換し、ヒドロキシルアミンへの還元、続くリバースCope転位反応による環化反応によって、イソインドール誘導体(8)へと導いた(4段階、41%)。その後、Grignard試薬を用いたエチル基の導入、ならびにヒドロキシルアミンのオキシムへの酸化反応を繰り返すことで、1,1,3,3-テトラエチルイソインドリン-2-オキシル誘導体(4)を収率11%で得ることができた。
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