研究概要 |
本研究の目的は、作物体内への農薬浸透移行過程を植物が生きたままの状態で計測する分析システムの開発であり、本年度は、昨年度から開発を検討していたアセタミプリドミュータントの開発をあきらめ、同じく土壌施用農薬であるイミダクロプリドに、ESR活性なスピンプローブ部位を持たせた分析ツールの開発を行いその開発にほぼ成功した。 ―イミダクロプリドミュータントの合成― 昨年度、開発を検討していたアセタミプリドミュータントは、合成最終段階のリンカー形成部位の導入が選択的に行うことができず、リンカー形成部位が異なる位置に導入された混合物として誘導体が得られた。種々、合成条件の検討を行ったが位置選択的な合成方法を見出すことができず、アセタミプリドミュータントの開発を断念した。そこで、交付申請書に記載した研究実施計画の変更を行い、イミダクロプリドミュータントの開発をおこなった。出発物質である2-クロロ-5-クロロメチルピリジンにニトロアミノイミダゾリンを導入し、農薬であるイミダクロプリドとした後、プロパギルブロマイドを作用させ、イミダクロプリドにリンカー形成部位である末端アセチレンの導入をした。イミダクロプリドにおいて比較的簡単にリンカー形成部位が導入できたため、既存のスピンプローブ剤の導入を検討した。2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリドンを臭素化し、続いてFavorskii転位を用いて環縮小反応を行い、2,2,5,5-テトラメチル-2,5-ジヒドロピロールを合成した。続いて二重結合の還元、カルボキシル基の還元を行いアルコール誘導体に導き、アルコールのメシチル化、アジドへの変換、ラジカル化を経て、リンカー形成部位を持ったスピンプローブ部位を合成した。今後、クリック反応を行い目的生成物であるイミダクロプリドミュータントの開発を行い、作物を用いた農薬ミュータントの評価を行う。
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