研究課題
本研究では、光合成初期過程を司る光捕集光電変換色素膜タンパク質LH1-RC、LH1とLH2複合体を対象に、そこで起きている色素膜タンパク質と金属イオン間の特異的な分子認識現象を取り上げ、その高度な分子認識機構を原子レベルで解明することを目的とする。これらの分子認識機構と生理機能の制御及び立体構造との相関情報に基づいて、生体超分子による高効率のアンテナ素子の構築を目指している。本年度は当初の実施計画に沿って、光合成細菌由来の光捕集反応中心タンパク質超分子複合体LH1-RCの単離と精製、結晶化及び構造解析の研究を行ってきた。大型放射光施設SPring-8とフォトンファクトリPFでのデータ収集及び特性評価を行い、原子レベルで同複合体の構造解明を成し遂げた。この中で、特に金属イオン(Ca2+)の結合部位が同定され、LH1複合体の特異な分光学的特徴を与える分子メカニズムを明らかにした。これらの成果は今年4月10日発行のNature誌にArticleとして掲載され、社会に発信することができた。一方、等温滴定マイクロカロリメトリー(ITC)測定によってタンパク質と各種2価金属イオンの結合に伴う強い信号が検出され、LH1複合体中の色素バクテリオクロロフィルaにおける金属イオン結合の様式を熱力学的に評価した。野生型LH1-RCおよびSr置換型LH1-RCに対するSrの結合力はCaよりも著しく低下すること、Srの結合はエンタルピー駆動型であることが示唆され、今後、構造と耐熱性の関連因子を考察する上で有益な知見を得た。
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Nature
巻: 508 ページ: 228-232
10.1038/nature13197
Biochemistry
巻: 52 ページ: 9001-9008
http://biophys.sci.ibaraki.ac.jp