平成25年度は、ヘテロな受容体タンパク質二量体にある2つのリガンド結合部位の機能を調べる目的で、ホルミルペプチド受容体の2つのサブタイプに選択的な2つのアゴニストを共有結合で架橋した二量体を合成した。今回二量体合成に用いたFPR1及びFPR2選択的アゴニストは、それぞれの受容体に同等の結合親和性をもつ必要があるため、それぞれHCO-Met-Leu-PheとTrp-Lys-Tyr-Met-Val-Met-NH2を選択した。比較の為、それぞれに対応するホモ二量化ペプチドもあわせて合成した。二価的受容体と結合できる2つのリガンド間に至適距離を評価するため、2つのペプチド間を複数のGly残基で架橋した。さらに、架橋には、迅速な合成を達成する目的でCysのジスルフィド架橋を用いた。ペプチドの合成はFmoc固相合成でおこなった。アミノ酸の縮合はHBTU-HOBt法でおこない、TFA溶液により脱樹脂をおこなった。得られたペプチドの純度はRP-HPLCで、構造はMALDI-TOF MSで確認した。生物活性は好中球様に分化させた急性骨髄性白血病細胞株を用い、細胞内Ca2+濃度変化として評価した。それぞれの受容体タンパク質から伝達されるシグナル量についてもあわせて検討した。得られたヘテロ二量体ペプチドはそれぞれの単量体ペプチドよりも高い生物活性を示した。それぞれのペプチドの受容体結合を調査する目的で、各サブタイプに選択的なアゴニストに夜脱感作、及び、各サブタイプに選択的なアンタゴニストを用いた実験をそれぞれ行った。その結果、ヘテロ二量体ペプチドの2つのペプチドはそれぞれ異なる受容体サブタイプと相互作用していることが示唆された。
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