研究課題
タグ化PrPを用いた神経砂防への添加条件の検討本年度は次年度の解析を円滑に行うことを目的として、大腸菌発現系にて狂犬病由来ウイルスの部分ペプチドを挿入したPrP(PrP-RV)の調製をおこなった。PrP-RVには、細胞内在性のPrPと区別するために2か所のアミノ酸置換を導入しエピトープタグとした。このエピトープタグを利用した検出を細胞上で行うため、蛍光標識した抗体を調整した。この抗体は内在性のPrPには反応せずに、今回導入したエピトープタグに反応することを同様のエピトープタグ付きのプリオン蛋白質を細胞で発現させることによって確認した。RVペプチドタグは神経芽細胞への結合を目的としている。RVペプチドタグについては、PrP上のどのような位置に導入するのが適切であるかを明らかにするために4か所の位置に挿入することを計画した。この位置の選択はあらかじめプリオン蛋白質の異常化への影響が小さい領域を選択している。大腸菌での発現は少し工夫が必要であったが、おおむね良好であった。精製と巻き戻しをおこない可溶性のサンプルを得た。ここでRVタグの導入位置によって巻き戻し反応の効率に違いが生じ、少量の蛋白質性沈殿が得られた。最初に不溶性の沈殿を尿素によって可溶化し、細胞への添加時に巻き戻し反応を行う実験系とした。結果として、RVペプチドを導入したPrP-RVに関しては導入位置によらずドット状に観測される細胞表面への結合を認めた。このような結合は内在性のPrPに非常によく似ていた。その後細胞は回収し、その細胞溶解液から添加したRV-PrPはウエスタンブロット上で半定量的に確認できた。可溶性PrPについては現在のところ結合は確認できていない。ここでは抗体の反応性を再検討する必要が生じた。現在のところ上記のように細胞膜表面に結合させたRV-PrPの異常化は見られていない。
2: おおむね順調に進展している
蛍光標識抗体の再評価を残しているものの、プリオン蛋白質修飾体についてタグの導入位置について検討をおこない、今回選択した4か所のタグ導入部位について、大きな阻害効果なく細胞表面へ結合させれることを確認できた。と同時に、細胞上での評価系を整備することができたことを意味している。一方添加条件について、添加時に細胞培養用の血清は除去し、高濃度の尿素中に可溶化したPrPを添加と同時に巻き戻し反応を行うように仕向けることによって細胞表面に結合した。これら一連のRVペプチドタグを利用して試験した結果は今後の試験のポジティブコントロールとして利用することが可能であり、本年度の目的である添加条件の検討と検出系の整備はおおむね順調に進行したと判断している。また、今回行った系において少なくとも今回の実験条件(添加蛋白質濃度、暴露時間、配列)では異常化は検出されないことが判明した。C末端での化学修飾導入の効果と併せて評価する必要性を再確認した。
当初の年度計画に従ってPrP修飾分子を調製し、アッセイに供する。前年度の結果を考慮し、試料の候補として新たにRVペプチドタグ挿入体へのC末端化学修飾を計画に加える。これは、RVペプチドタグの挿入が別実験によって、大きな異常化の阻害的な効果は見られなかったからである。したがってこのペプチドタグの挿入は細胞表面上の位置の特異性を期待したものである。また、異常化に関してはC末端での表面結合が上に述べた実験から明らかになってきているので、これら二つの細胞表面への結合をより細胞上での異常化を促進するために、相乗的に利用できればと考えている。
当初の年度計画に従い、アッセイ用の細胞培養消耗品、大腸菌発現系による前駆体蛋白質調製・精製用消耗品、定量用の抗体や修飾試薬といった消耗品など、また、学会・研究会参加のための旅費に充てる。
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