研究課題/領域番号 |
23550197
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
野島 高彦 北里大学, 一般教育部, 講師 (00291930)
|
キーワード | DNA / 論理演算 / PCR / プライマー |
研究概要 |
本研究課題の目的は,分子間相互作用に基づく論理演算システムを開発するために,生体高分子化合物を構成要素とする分子システム構築の可能性を探ることがである.研究開始年度以降一貫して,ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において,2種類のプライマーDNAを化学的な入力信号に,増幅産物DNAの生成を出力信号ととらえて,両者の関連性をバリエーション展開する試みを続けている.すでにAND,OR,NOTといった基本的な論理演算パターンの構成には成功しており,その成果を踏まえて,万能演算ゲートとも呼ばれるNAND型演算の実現に取り組んだ.ここでは,入力信号がゼロの際にデフォルトでDNA増幅反応が進行するが,2種類の入力が揃った場合に限ってこの進行が停止する仕組みを構成した.ここでは,テンプレートDNAがコードする翻訳領域は同一配列だが,その前後に配置されるプライマーDNA会合領域の配列の異なる2種類のテンプレートDNA分子を当分子数共存させる構成を導入した.この構成は成功したが,反応特異性と増幅効率に不十分な点があり,これを解決するために研究課題全体においてプライマーDNAのアニーリング配列を見直すことが必要となった.そこで今年度は新しくデザインしたアニーリング配列を導入したテンプレートDNAおよびプライマーDNAを用いてPCRを行った際の反応特異性と増幅効率改善について,重点的に検討を加え,問題解決を図った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
検討開始時点では特異性も増幅効率も不十分であって反応系が最適化されつつあり,種々のDNA増幅系と,無細胞GFP翻訳系との組み合わせ実験も可能な段階に到達している.研究成果は学会発表および査読審査つき学術論文誌にて報告するために準備中である.
|
今後の研究の推進方策 |
プライマーDNAの配列最適化や増幅反応,翻訳反応の最適化を継続して行う.システムの高度化をめざした最適化を進めて行く.テンプレートDNAの構成に関しても検討を続ける.これとあわせて論理判断システムのパッケージ化にとりくみつつ,分子レベルの情報処理システムとしての発展を試みる.
|
次年度の研究費の使用計画 |
プライマーDNAおよびテンプレートDNAのデザインに時間をかけた段階があり,ここでは物品の購入頻度が低下し,かわりにコンピュータ上でのデザインが研究時間の大半を占めていたため,次年度使用額が生じた. 生体高分子を構成要素とする論理判断システムの構築に必要となる耐熱性DNAポリメラーゼ,鋳型DNA,プライマーDNA,ディスポーザブルプラスチック器具,緩衝溶液などの消耗品を購入する.
|