研究課題/領域番号 |
23550197
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
野島 高彦 北里大学, 一般教育部, 准教授 (00291930)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | DNA / PCR / 論理演算 / プライマー / 鋳型 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は,分子間相互作用に基づく論理演算システムを開発するために,生体高分子化合物を構成要素とする分子システム構築の可能性を探ることである.研究開始年度以降,一貫してポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において,2種類のプライマーDNAを化学的な入力信号に,増幅産物DNAの生成を出力信号ととらえて,両者の関連性をバリエーション展開する試みを続けている.すでにAND,OR,NOTといった基本的な論理演算パターンの構成には成功しており,その成果を踏まえて,万能演算ゲートとも呼ばれるNAND型演算も実現できた.ここでは入力信号がゼロの際にデフォルトでDNA増幅反応が進行するが,2種類の入力が揃った場合に限ってこの進行が停止する仕組みを開発した,ここでは,鋳型となるDNAがコードする翻訳領域は共通だが,その前後に配置されるプライマーDNA会合領域配列の異なる2種類の鋳型DNA分子を等分子数共存させる戦略を選んだ.この構成自体は妥当なものであったが,反応特異性と増幅効率に不十分な点が残されており,これを解決するために研究課題全体において鋳型DNAとプライマーDNAとの会合配列構造を見直した.数段階に渡る配列最適化を経て,論理演算バリエーション展開が可能となる配列候補の絞り出しに成功している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までの実験研究で不十分であった点を基本に立ち返って検討しなおした.反応系の最適化がほぼ終了しており,種々のDNA増幅系と,生体外蛋白質合成系との組み合わせ実験も準備が整っている.研究最終年度内に査読審査付き学術論文誌に投稿するとともに,国内外の学術会議で成果を発表する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
DNAレベルでの論理演算システム構成最適化を完了させ,無細胞蛋白質合成反応との組み合わせ実験を積極的に進めて行く.そしてこれまでに開発したすべての論理演算パターンにおける特性を詳細に比較し,生体高分子を構成要素とする分子レベルの情報処理システムとしての高度化をめざす.
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次年度使用額が生じた理由 |
DNAを用いる実験での検討に重点的に取り組んだ後に,無細胞蛋白質合成系を用いる研究を集中的に行う計画とした.無細胞蛋白質合成系を用いる実験では高額な生化学キットを使用するが,これが長期保存に適していないことと,ロット間の特性ばらつきが危惧されたことから,年度内の購入を見送っていた.また,DNAを用いる検討では,同一配列DNAを用いて多種類の検討を行ったため,当初の計画よりも消耗品使用量が抑えられている.こうした状況が組み合わさり,次年度使用額が生じている.
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次年度使用額の使用計画 |
主に消耗品の購入と国内外の学術会議への出席,および論文誌への投稿に使用する計画である.
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