研究課題/領域番号 |
23550199
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
矢島 博文 東京理科大学, 理学部, 教授 (10147506)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | β-グルカン / キトサン / カードラン / ヨウ素錯体 / 高分子ミセル / 高分子ナノゲル / 環境応答性 / 薬物キャリヤー |
研究概要 |
本研究は、β-グルカンの自己集合を利用した薬物キャリヤーとしての機能を有する新規環境応答型医用材料の創製を目指すため、親水性ポリマーとの共重合化によるβ-グルカンの水溶化および高分子ミセルあるいはナノゲルの構築を図り、ヨウ素を薬物とし、それらとの相互作用を物理化学的測定により評価した。β-グルカンとして、β1,4-グルカンのキトサン(Ch)およびβ1,3-グルカンのカードラン(Cur)を用いた。親水性ポリマーとして、PEGおよび温度応答性高分子ポリN-イソプロピルアクリルアミド(PNIPAAm)を用い、β-グルカンとのブロック化およびグラフト化を行った。本年度の成果として、以下の共重合体の合成に成功した: (1) ChとPEGとのブロック体 (Ch-b-PEG) および グラフト体 (Ch-g-PEG); (2) ChとPNIPAAmとのグラフト体 (Ch-g-PNIPAAm)。また、TEMPO酸化によりCurの6位メチロール基をカルボキシル化(CurCOOH)し、Curの水溶化に成功した。特に、Ch-b-PEGおよび Ch-g-PEG共重合体のヨウ素との錯形成に関する特性を下記にまとめた: 未修飾キトサンのヨウ素錯体(ChI)調製は酸性水溶液の凍結解凍法による特殊な方法にたよるが、Ch-b-PEGおよび Ch-g-PEG共重合体とも、それらのヨウ素錯形成は、室温下で水溶液混合のみで容易に起きた。DLS測定による構造特性評価から、Ch-b-PEG共重合体は高分子ミセルを、またCh-g-PEG共重合体は高分子ナノゲルを形成するものと示唆された。本年度創製したCh-g-PEG共重合体のヨウ素複合体のナノゲル粒子には、生体内環境下において安定性を保ちつつ、酸性下におけるヨウ素徐放効果による殺菌性を有する新規環境応答型薬物キャリヤー材料としての応用が期待された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1) Ch-g-PNIPAAm共重合体を合成し、pHをパラメータとしてCh-g-PNIPAAm共重合体の溶液のLCSTをその濁度および粒径の温度依存性から観測したが、その挙動は複雑で、現在合理的な説明がついていない。Ch、PNIPAAmの分子量を含め、安定な溶液調製条件を検討中である。(2) Ch-g-PNIPAAm共重合体とヨウ素の錯形成条件が確立していない。(3) Ch-b-PNIPAAm共重合体の合成法が確立していない。(4) 未修飾CurおよびTEMPO酸化により調製したCurCOOHのヨウ素錯形成能について評価されていない。(5) Cur-g-PEGおよびCur-g-PNIPAAmの合成法が確立していない。
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今後の研究の推進方策 |
(1) Ch-b-PEG、Ch-b-PNIPAAm、Cur-b-PEG、Cur-b-PNIPAAm共重合体の合成に向け、ChおよびCurCOOHの分子量をパラメータとして、各還元糖末端の酸化による末端COOH基の導入を検討する。(2) CurCOOH を用いて、グラフト率をパラメータとしてCur-g-PEGおよびCur-g-PNIPAAm共重合体の合成を検討する。(3) Ch-g-PEGおよびCh-g-PNIPAAm共重合体のグラフト率および分子量をパラメータとして、ヨウ素およびフラーレン錯体の物理化学的特性を追究する。(4) Ch-b-PEG共重合体の分子量をパラメータとして、ヨウ素およびフラーレン錯体の物理化学的特性を追究する。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品費(試薬、ガラス器具、カラム等)および国外学会出張費に使用する。
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