クロロフィル類は光合成の主要色素であり、その光機能性部位である環状テトラピロール部分の中心には主にマグネシウムが配位している。このクロロフィルの中心金属の脱離反応(脱金属反応)は光化学系2型の光合成反応中心の一次電子受容体の生成やクロロフィル分解初期過程で重要であるにもかかわらず、メカニズム解明が遅れている。そこで本研究では、分子構造が異なる天然クロロフィル類やテトラピロール環に結合する置換基を系統的に改変した合成クロロフィル類を調製し、それらの単量体レベルでの脱金属反応を速度論的に解析することで、脱金属反応特性と分子構造との相関を明らかにする研究を行った。また、クロロフィル類が秩序だって自己集積した光合成超分子の分解を構成クロロフィル分子の脱金属によって誘起し、その挙動を解析した。 平成25年度は主に、クロロフィル分子構造と脱金属反応特性の相関に関して詳細な情報を得るために、クロロフィルcおよびそれらの類縁体の脱金属反応解析と、ホルミル基を複数導入した合成クロロフィル誘導体の脱金属反応解析を行った。クロロフィルc関連の反応解析では、テトラピロール環の構造や17位アクリル酸残基が脱金属反応特性に与える影響を明らかにした。また、ホルミル基を有する合成クロロフィル誘導体の反応解析では、テトラピロール環に直結した複数の置換基の足し合わせの効果で脱金属反応特性が変化することを示した。あわせて、緑色光合成細菌の主要アンテナ超分子・クロロゾームタイプの色素集積超分子を酸性条件下で反応させ、その分解挙動を構成クロロフィル分子の脱金属反応特性を考慮して解析した。 平成25年度に得られたこれらの研究成果は査読付論文2報、学会発表4件で発表しているとともに、現在査読付論文1報を投稿中である。
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