研究課題/領域番号 |
23550203
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
帯刀 陽子 山形大学, 理工学研究科, 助教 (30435763)
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研究分担者 |
岡田 修司 山形大学, 理工学研究科, 教授 (30250848)
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キーワード | ナノコイル |
研究概要 |
ナノワイヤは、分子エレクトロニクス実現のための基本的なパーツとしてその開発に大きな関心が寄せられ、デバイス応用に向けての研究が国内外で活発に行われている。そこで、本研究では導電性分子の両端の相互作用を制御したり、重合することで1次元構造を形成する分子を付与し、自己組織能を利用することで直線状や螺旋状のナノワイヤ構造の作製を目指すこととした。 ①有機導電性分子からなる分子性ナノコイルの構築 これまでに行ってきた分子集合体ナノワイヤに関する知見から、分子性導体に「かさ高いキラル分子」と「水素結合部位」を導入することで、非対称な側鎖を付与した分子を合成した。分子の両端に異なる相作用を有する部位を導入することで、螺旋構造を形成すると考えられる。両親媒性の分子性導体としてこれまでに、膜状態で金属性を示すことが確認されているBEDO-TTF、BEDO-TTF、 [M(dmit)2] (M=Ni, Au)のような分子に3つの特性、具体的には、(1)TTF部位、(2)アルキル・キラル鎖部位、(3)水素結合部位を付与した分子を合成した。このような分子を用いることで、「水素結合部位が結合したTTF部位」と「キラル分子が結合したTTF部位」は違った結合力でスタックすると考えられるため、分子配列にゆがみが生じコイル構造を形成することができた。この分子設計における重要なポイントは、コイル構造を作製し、内側と外側の結合力を変化させることで螺旋構造を作製する点である。分子性コイルは幅が1分子のみの配列から構成されているため、ナノコイルが作製出来たと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では導電性分子の両端の相互作用を制御したり、重合することで1次元構造を形成する分子を付与し、自己組織能を利用することで直線状や螺旋状のナノワイヤ構造の作製を目指した。膜状態で金属性を示すことが確認されているBEDO-TTF、BEDO-TTF、 [M(dmit)2] (M=Ni, Au)のような分子に、3つの特性を付与した分子を合成することに成功した。その3つの特性は、TTF部位、アルキル・キラル鎖部位、水素結合部位である。この分子を用いてキャスト膜を作製したところ、分子性ナノコイルを作製することができた。TCNQなどのアクセプター分子と組み合わせることで、TTF部位が高い伝導性を発現した。S-(-)-フェニルエチルアミンやコレステロール、ボルネオールといった生体物質を導入することで螺旋構造を形成した。また、側鎖に水素結合を導入したところ、1次元構造を安定して作製することに成功した。このように、内側と外側の結合力を変化させることで螺旋構造を作製し、ナノコイルを固体基板上に固定化させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
ナノデバイスを作成するには、ナノオーダーでの分子集合化に適した環境を整えることが必須である。近年、PCI-AFMを用いることにより、試料表面にダメージを与えることなく、タッピングモードで形状像と電流像の同時測定が可能となった。本研究ではこの測定法を用いてナノワイヤ1本の電気物性を評価する。作製した分子性コイルについて、螺旋回転数やピッチを変え、それに伴う機能性の変化を確認する。ピッチの幅を制御することで「形状記憶コイル」を、回転数を制御することで磁場強度が変化する「電磁気コイル」を作成する。 本研究では、分子性コイルの動的変化による飛躍的な機能変化を利用し、新規ナノデバイスを作成する。これは、電磁気コイルのみならず、磁場存在下で電気が発生することからナノシステムにおけるエネルギー供給源になると期待できる。微小電極と導電性AFMを用いて、分子性ナノコイルの電気物性評価を行なう。具体的には、微小電極基板上にテンプレートを作製し、螺旋構造を有するナノワイヤを作製した後、電気物性評価を行う。電気伝導度は2端子法もしくは4端子法を用いて行い、温度を変化させながら極低温まで測定し (~300 mK)、温度依存性から導電挙動の機序を探る。分子性ナノコイル1本の評価には導電性AFMを用いる。AFM測定により構造を明確にしたナノワイヤに導電性のAFM探針を接触させ、電気伝導度の測定を行う。基板表面の吸着水の影響を防ぐために、真空下での測定についての検討を行い、また室温から液体窒素までの領域で測定を試みる。螺旋構造の始点には金電極と終点部分に探針を接触させ、電気伝導度を測定する。インピーダンス測定によりコイルとしての性能も評価する。更に、直線構造と螺旋構造の電気伝導度を比較し、導電性ナノワイヤの伝導度形状依存性について明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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