研究課題/領域番号 |
23550206
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
猪股 智彦 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40397493)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | イオン液体 / 修飾電極 / 架橋 / オレフィンメタセシス / 機能性化合物 / 機能性電極 |
研究概要 |
本申請では,イオン液体修飾電極中に機能性化合物(例えば酸素4電子還元を触媒する鉄複核錯体など)を導入することで,機能性電極を作製することを目的としている.特に,目的の機能性化合物を導入後にイオン液体同士を電極上で架橋することにより,これまでより安定した機能性電極を作製することが可能である. 本年度は上記の目的を達成するために,末端に結合性官能基を導入した4級アミン型イオン液体修飾電極の作製とその物性評価を目的とした.まず新規に末端にアルケンを導入したジスルフィド含有4級アミン型イオン液体を設計・合成した.本化合物はこれまでに我々のグループで合成されたジスルフィド含有4級ホスホニウム型イオン液体の修飾方法を参考に合成された. 続いて,合成された4級アミン型イオン液体を金基板上へ自己組織化法により修飾し,その物性等を表面赤外分光法および電気化学測定法を用いて評価した.その結果,金基板上に4級アミン型イオン液体が修飾されていること,これまでの4級ホスホニウム型イオン液体修飾電極と同様に,外来性の分子を導入することが可能な空間を有していることが判明した. 次に,単核金属錯体を用いてイオン液体修飾電極中へ外来性分子の導入実験を行ったところ,これまでのイオン液体修飾電極同様,分子が取り込まれていることが判明した.現在,オレフィンメタセシス反応による末端結合基の架橋反応による導入分子の物性変化や安定性に関しての評価を行っているところである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では,イオン液体修飾電極中への外来性分子の導入および架橋反応による安定化を行い,取り込まれた分子の物性を評価するところまでを平成23年度の目標としていたが,実際の進捗状況は外来性分子を導入後に架橋反応を行うところまでで留まっている. 当初計画に比べて進捗状況が遅延した理由は,本申請のために新規に設計・合成を行った末端結合基(アルケン)を含むジスルフィド含有4級アミン型イオン液体の合成に手間取ったためである.一般にイオン液体は蒸気圧が極端に低いために精製方法が限られるという問題点を持っている.上記の化合物も精製作業に手間取り,そのため全体の研究計画が当初の計画より遅れる結果となった.なお現段階では,精製法を含めた合成ルートを確立することが出来たため,本問題は既に解決されている. 上記に挙げた理由のため,平成23年度の進捗状況は当初計画の8割程度となった.
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今後の研究の推進方策 |
基本的に当初の計画通りに研究を遂行する予定である.イオン液体修飾電極への機能性化合物(主に酸素の4電子還元反応を触媒する鉄複核錯体など)を導入後,末端置換基を架橋した上で,導入分子の安定性や物性の評価,温度変化に対する応答性や触媒反応性の変化を測定する予定である. なお当初計画からの進捗状況の遅れのため,平成23年度中に予定していた実験等の一部に関してはH24年度前半に行う予定である.上記の【現在までの達成度】の項で述べたように,計画が遅れた要因に関しては既に解決済みであるため,平成24年度中に進捗の遅れを取り戻す予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の進捗状況や別プロジェクトによる予算配分が生じたため,消耗品費および旅費等の総額が当初計画予算よりも下回ったため,繰り越し予算が生じた. 設備備品に関しては当初計画通り,循環冷却装置の購入を予定しているが,上記の繰り越し予算があるため,その分は表面赤外分光用の特注セル等の購入費に充てる予定である. 消耗品としては当初の計画通り,合成用の試薬およびガラス器具,電極材料作製用の各種金属線(AuおよびPt)やQCM用のセンサーチップの購入に充てる. また旅費および謝金等に関しても当初の計画に沿った使用を考えている.
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