研究概要 |
酸化グラフェンを化学的手法により還元して得られる化学変換グラフェン(CCG)は、大量合成が容易であり、かつ溶液プロセスでの薄膜化が可能であるため、新たな炭素材料として注目を集めている。近年、CCGに様々な化学修飾を施して溶解性の向上や機能の付与を目指す試みが活発に行われている。その一つとして可視光領域に吸収帯を持ち、優れた電子ドナーとして働くポルフィリンを用いた修飾が報告されている。平成25年度の研究ではCCGに長さの異なる直線状で剛直なオリゴフェニレンスペーサーを介してポルフィリンを共有結合させた複合体(CCG-Phn-ZnP, n=1-5)を合成し、それぞれについて構造の同定と光物性の評価を行った。 パラ位にボロン酸エステルを有するフェニレンで修飾されたCCG (CCG-Ph-Bpin)と末端がブロモ化されたオリゴ-p-フェニレンスペーサーを有するポルフィリンを鈴木-宮浦カップリングさせることで複合体(CCG-Phn-ZnP)を合成した。この複合体はDMFなどの有機溶媒に可溶であった。複合体の吸収スペクトルはグラフェン、スペーサー、ポルフィリン部位の吸収を足しあわせた波形となった。また、複合体の発光スペクトルを測定したところ、複合体のポルフィリン由来の定常蛍光強度はスペーサーの長さに依存してそれぞれ異なることがわかった。これは、ポルフィリン-グラフェン間の距離が変化すると共に両者の励起状態での相互作用が変化し、それぞれの複合体が異なる消光挙動を起こすためであると考えられる。つまり、CCG-Ph1-ZnPではエキシプレックス形成を経由した失活が起こることが既に明らかになっている。スペーサー距離が長くなるにつれ、ポルフィリン分子のCCGに対する傾き角も変化している可能性があり、その結果、エネルギー・電子移動など他の失活過程が複雑に競争していると考えられる。
|