研究課題/領域番号 |
23550208
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
山雄 健史 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (10397606)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 高性能レーザー / 先端機能デバイス / 有機導体 / 有機結晶 / 駆動方法 |
研究概要 |
1. 積層結晶のpn材料組合せ、および積層順番の最適化 優れた発光および電子物性をもつ有機半導体オリゴマーのTPCO材料を用い、様々なタイプの電流励起発光デバイスを作製した。最適なp型およびn型のTPCO材料の組合せを探るため、それを様々に変えた薄膜発光デバイスを作製した。得たデバイスの発光輝度や外部量子効率の比較から最適な組み合わせを決定するとともに、各々の材料のHOMOやLUMO準位、金属のFermi準位を比較して、その妥当性を確認した。これらの結果は、結晶デバイスへ適応可能な基礎的な知見となる。次いでTPCO結晶を用いた発光トランジスタ素子の電極金属を有機半導体で修飾することで、電荷注入効率および発光輝度の向上に成功した。有機薄膜層による金属電極の修飾は、発光デバイス以外の素子にも有効である可能性を見出した。積層結晶デバイスでは、p型およびn型材料の積層順番を変えた素子を作製して特性評価を行った。これらの素子では、ソースおよびドレイン電極が、両結晶共に設置されたサンドイッチ型の構造をもつ。積層結晶デバイスは、p型およびn型の結晶の積層の順番に関係なく、共に発光に有効であることを明らかにした。2. 発光・キャリア輸送時間分解観測システムの構築 以前に発光トランジスタのゲート電極に交流電圧を印加して効率的に素子を発光させる「交流ゲート駆動」を開発した。高効率発光のメカニズムの解明には、素子を流れる電流や素子からの発光の時間変化を詳細に観測する必要がある。本研究費で購入した「小型・絶縁8ch高速マルチレコーダ」を用い、そのようなシステムを新たな構築した。従来のシステムは、周波数が数kHzを超えた交流ゲート電圧印可下での、発光や電流の時間変化の観測が困難であった。今回構築したシステムでは、それが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
積層結晶を利用した発光トランジスタを効率化するための、結晶積層構造、有機材料の組合せなど、いくつか基礎的な指針を得ることができた。また新たに、金属電極の有機薄膜での修飾が効果的であることを見出した。これらの成果は、レーザー発振実現の基盤となる高効率な有機発光トランジスタ構築のための重要な要素技術となる。 さらに、今回、交流ゲート駆動における発光トランジスタの時間分解観測がより高い周波数まで可能になった。すなわち、交流ゲート駆動での素子の発光原理を解明するための強力な観測ツールが得られたことは、意義が大きい。
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今後の研究の推進方策 |
1. 狭いゲート電極を持つ素子の作製 発光トランジスタのゲート電極を狭くすることで(狭ゲート素子)、素子の耐電圧が向上すること、狭ゲート素子に積層結晶が適応可能であることをすでに見出している。また、ゲート絶縁膜に回折格子を施すことで、発光スペクトルの幅が10 nm以下となる狭線化発光も実現した。本年度の成果にこれらを組み合わせ新たな素子構造を開発し、最適化する。これにより安定に狭線化発光する電流励起発光素子を実現し、レーザー素子に必須である電流励起による光増幅現象を引き起こす駆動条件を見出す。2. 交流ゲート駆動条件の最適化 今年度に構築した観測システムにより、交流ゲート駆動法の電圧印加方法、周波数、ゲート波形を最適化する。具体的なパラメータとして、各電極間のベースの電位差、周波数、デューティー比を変化させ、最適な交流ゲート駆動条件を見出す。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、物品費、旅費、その他にあてる。物品費で、基板、溶媒、ガラス器具を含む実験必需品を購入する。旅費は、国際会議(国外1件程度、国内2件程度)や国内会議(2件程度)の旅費に充当する。その他の費用は、国際会議参加費、論文印刷費に用いる。
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