研究課題
フラーレンがアニオン化されたフラーレンアニオン(フラーライド)は、超伝導性、強磁性などの様々な特異的物性を示すことが知られているが、本研究課題では、これらフラーライド物性を活かし、将来電子材料として展開するための基本的知見を蓄積するため、電子材料でとりわけ注目されている界面制御に関する観点から研究を進めてきた。フラーライドの示す興味深い物性発現には、フラーレンのフロンティア軌道と電子状態が大きく関わっており、主としてヤーン-テラー効果により生じるフラーレンケージの歪みであるが、フラーライド塩の構造解析には対カチオンとの相互作用によりディスオーダーを抑制することが非常に重要なアプローチとなる。平成25年度には、2価のフラーライドのケージ歪みとその電子状態に関する新たな知見を得るため、対カチオンとして、これまでの1価フラーライドを与えるトリアリールメタン系色素カチオンに対して、同様に三次元的な立体構造を取りながら、2価の有機カチオンであるルシゲニンを用いた。このカチオンとの相互作用はヤーン-テラー効果に加えてフラーレンケージにさらなる歪みを引き起こすため、対カチオンの影響を検討することができる。対カチオン誘導体合成、および新規分子性フラーライドジアニオン塩に関する電解結晶成長法によるフラーライド塩の合成のための詳細な条件検討に加え、伝導度測定装置を整備して伝導挙動も測定し、またESRに関しても検討を加えた。X線構造解析により、フラーレンケージがカチオンとの相互作用により強く歪んでいることが示唆された。最終年度の成果としてフラーライドジアニオンにおいて、ヤーン-テラーゆがみを実証し、分子性カチオンとの強い相互作用によりフラーレンケージ歪みが増大することを明らかにし、電子状態に関して新たな知見を見出したことは、非常に興味深い研究成果と言える。
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Appl. Spectrosc.
巻: in press ページ: in press
MS No 13-07432
Chem. Commun.
巻: 49 ページ: 7376-7378
DOI: 10.1039/c3cc43901a