研究課題/領域番号 |
23550213
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
宮前 孝行 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 主任研究員 (80358134)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 和周波発生 / 表面・界面 / 有機EL / レーザー分光 |
研究概要 |
研究計画初年度は、真空下でのSFG計測を可能にするために、既存のSFG計測装置の試料部に接続する小型高真空チャンバーの設計及び製作を行った。またそれと並行して、迷光除去のためのSFG光検出系の最適化を進めた。このSFG測定装置は励起用の可視光波長を420から640nmの間で波長を選択できるよう改良されたものであるが、本システムを用いて研究実施計画に記載の、有機EL材料の電子輸送・発光材料として用いられるAlq3分子を用いたSFG計測を行った。Al蒸着膜の上にAlq3を積層させると、Alq3の最低励起エネルギーとほぼ一致するところでAlq3のキノリノールのC=C伸縮、CH変角などの極大が見られたが、Alq3の上にAlを直接積層させた後、透明基板側から界面をSFGで測定した場合、この極大がほぼ消失した。これはAlとAlq3が直接化学反応を起こし、分子のHOMO準位が置き換わったためであると考えられる。またAlq3とAlの間にLiF層を挿入するとC=C伸縮が低振動数側へシフトする挙動が観測されたが、これはLiFとAlの反応により単離したLiが電子受容性のAlq3に電子を受け渡している、すなわち界面でのLiドーピングによるものと結論した。一方で、使用する金属をAlからAgに変え、Alq3の膜厚を精密に制御し、単分子層程度にしたAlq3/Ag界面の2色可変SFGの測定においては、1570cm-1付近にAlq3/Alの系では観測されなかった振動モードが出現した。この振動モードは自己組織化単分子膜を吸着させたAg上にAlq3を蒸着した場合には観測されないことから、Alq3とAgとの界面における電荷移動に伴い低振動数側にシフトして現れたRaman活性な振動モードであると結論した。このように有機材料と金属との界面の相互作用を知る手法として2色可変SFGが非常に有効な手法であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画は、2色可変SFGが測定可能な小型真空チャンバーの製作と、チャンバー導入に伴う光学系の再構築が大きな目標であり、おおむね順調に進展している。今後この真空チャンバーを使用して真空条件下でのその場計測を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
H23年度に製作した真空装置を使用して、有機材料の2色可変SFG測定を着実に遂行する。一方で、実デバイス構成による動作条件下におけるSFGのその場計測についても試験的に実験を進めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
真空装置を具体的に稼働させながらSFGを計測するには、実際にSFG測定装置と接続したのち、さらに光導入のためにいくつかの光学素子の導入や試料の位置調整機構が必要である。これらは実際に設置した後に最適化する必要があるため、試料を固定する冶具や真空機器の消耗部品等については、次年度に購入することとした。使用予定の試薬類等も保管期限等も勘案して、次年度購入を行う。
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