本年度は、可視光波長可変SFG分光を用いて、有機物と電極との接合界面挙動の解明と、界面における振電相互作用現象の解明を進めるため、(1)有機薄膜太陽電池材料の表面構造の解析。(2)有機ELデバイスの駆動時の挙動解析を進めた。 (1)加熱による有機薄膜太陽電池表面構造の影響の解析:π共役系高分子を用いた有機薄膜太陽電池デバイスでは加熱により変換効率が向上することが知られているが、その表面でどのようなことが起こっているかは不明であった。SFG分光による解析から、加熱によって表面の結晶性が向上し、バルクだけでなく表面においてπ共役鎖長が広がっており、表面での可視光吸収端が低波長に伸張していることが明らかになった。π共役鎖長が大きくなり吸収波長帯が低波長に伸張することは電荷輸送特性の向上や変換効率の向上に影響する事象であり、有機薄膜太陽電池表面での構造変化を分子レベルでとらえることができた。 (2)有機ELデバイスの駆動時の挙動解析:アルミキノリン錯体(Alq3)を電子輸送・発光層として使用する有機EL素子に対し、構成する有機層の膜厚を変化させた素子を何種類か作製し、SFG分光による膜厚の効果を検証した。SFGスペクトルではAlq3層の膜厚が厚くなるほどAlq3由来の振動モードの強度が強くなる現象が見られた。SFGでは通常等方的な配向を有するバルクからは信号が出ないが、Alq3膜では真空蒸着により分子分極が膜の法線方向に整列して配向することが知られている。こうした異方性膜の場合、膜全体からSFG信号が出ることが考えられるが、SFG信号の膜厚依存性からAlq3膜の異方性がデバイスとして作製した状態でも残っていることを示している。さらに連続駆動した有機ELについても系統的な解析を進めている。
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