研究課題/領域番号 |
23550217
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
酒井 秀樹 東京理科大学, 理工学部, 准教授 (80277285)
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研究分担者 |
坂本 一民 千葉科学大学, 薬学部, 教授 (70537183)
酒井 健一 東京理科大学, 理工学部, 助教 (20453813)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 界面活性剤 / 光異性化 / 分子集合体 / 紐状ミセル / 吸着可溶化 / 光学異性体 |
研究概要 |
1) アミノ酸系界面活性剤の自己組織化構造に及ぼす光学異性の影響の解析我々はこれまでに、光学活性分子であるN-アシルAla塩と水および長鎖アルコール混合系の自己組織体の構造が光学異性体およびラセミ体間でほぼ同等であるが、ある組成で生成する液晶においてのみ分子由来の光学異性を反映した高次の不斉構造を生成することを発見した。 そこで本年度は、電荷遮蔽用界面活性剤としてキラル界面活性剤であるN-アシルAlaのエステルを用いた系の相状態を検討した。さらに、キラル高次構造形成条件の解析を行った。2) アゾベンゼン修飾界面活性剤を用いた光粘性制御系における会合体構造変化機構の解析我々はこれまでに、セチルトリメチルアンモニアブロミド(CTAB)が形成する高粘性の紐状ミセル溶液に対して、光照射により可逆的にtrans/cis 異性化を示すアゾベンゼン修飾界面活性剤(AZTMA)を少量加えた系において、AZTMAがtrans体の時には紐状ミセルの形成を保持するのに対して、紫外光照射によりcis体が形成すると、紐状ミセル構造が崩壊し、粘性が著しく低下することを見いだしている。本年度は透過型電子顕微鏡、小角X線散乱などの解析手法を用いて自己組織化構造の光誘起変化の機構について検討した。さらに、新規にアゾベンゼン修飾二鎖型界面活性剤を利用した溶液物性の光制御についても検討した。3)難水溶性有機化合物の添加による界面活性剤分子吸着膜のモルフォロジー変化 幾何学的分子曲率の異なる二種類の界面活性剤(モノメリック型、ジェミニ型)を同時添加し、固/液界面に混合吸着膜を形成させると、その吸着モルフォロジーは両者のモル分率を考慮するだけでは説明のつかない劇的な変化を遂げることがわかった。さらに、固/液界面に形成された界面活性剤吸着膜の難水溶性有機化合物の可溶化現象について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「1) アミノ酸系界面活性剤の自己組織化構造に及ぼす光学異性の影響の解析」については、アミノ酸をビルディングブロックとするジェミニ型界面活性剤の開発にも成功し、その相挙動や、紐状ミセル形成挙動について新規な成果を得ることができた。キラリティーを分子集合体のレベルで発現させる検討については、24年度更に検討を行う予定である。「2) アゾベンゼン修飾界面活性剤を用いた光粘性制御系における会合体構造変化機構の解析」については、二鎖型構造を有するアゾベンゼン修飾界面活性剤を合成し、これが水中でベシクルを形成すること、ならびにその形成が光照射により制御であることを示すことができた。また、有機溶媒中での逆紐状ミセル形成についても検討を行った。「3)難水溶性有機化合物の添加による界面活性剤分子吸着膜のモルフォロジー変化」については、固/液界面に形成された界面活性剤吸着膜に対する、スピロピランなどの光応答性難水溶性有機化合物の可溶化現象について検討し、スピロピランの光反応に誘起されて界面活性剤吸着膜の構造が可逆的に変化することを示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
1) アミノ酸系界面活性剤の自己組織化構造に及ぼす光学異性の影響の解析キラル界面活性剤であるN-アシルAlaのエステルを電荷遮蔽剤として用いた系の相図作成とキラル自己組織化構造領域の確認を行う。また、アミノ酸由来のジェミニ型界面活性剤の自己組織化挙動についても詳細な検討を行う。2) アゾベンゼン修飾界面活性剤を用いた光粘性制御系における会合体構造変化機構の解析一鎖型、二鎖型構造を有するアゾベンゼン修飾界面活性剤が形成する分子集合体の光異性化反応に伴う構造変化を、cryo-TEM, Freeze-Fracture TEM, 小角X線散乱などの方法を駆使して明らかにする。3)難水溶性有機化合物の添加による界面活性剤分子吸着膜のモルフォロジー変化平成23年度の成果をもとに、界面活性剤混合系における会合形態を決定する新規パラメーターの提案について検討を行う。1)から3)までの検討結果を総括して、界面活性剤の分子構造と分子集合形態を関連づける統一的パラメータについて検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
「次年度使用額」は355円とわずかであるので、これと平成24年度研究費を合わせた額を、研究分担者2名と分担で使用していく予定である。特に、研究者間の密接な議論により、研究の進め方同様、予算の使用法についても最適化を図り、適正かつ有効に使用していきたい。支出区分としては、界面活性剤、溶媒などの試薬、測定セルなどの消耗品費を中心に使用していく予定である。
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