研究概要 |
本年度の研究においては、超臨界二酸化炭素中で効果的に触媒能を発現する触媒合成に主眼を置き、実験を行った。まず、光学活性な BINAP の4,4' 位に含フッ素置換基を導入した(S)-4,4’-C6F13-BINAPの合成を行った。その後、これを保護基とするキラル有機分子保護パラジウムナノ粒子((S)-4,4’-C6F13-BINAP-Pd NCs) を合成した。合成した(S)-4,4’-C6F13-BINAP-Pd NCsは、茶褐色の固体粉末であり、ジクロロメタンに分散させると茶褐色の溶液となった。これにより、有機溶媒に対しても親和性と再分散性を示すナノ粒子であることが確認できた。また、(S)-4,4’-C6F13-BINAP NCsの透過型電子顕微鏡観察を行ったところ、その平均粒子径が1.2 ± 0.2 nmであり、非常に小さく、粒子径の整った粒子であることを確認した。また、凝集した粒子がほとんど見られなかったことから、分散性に優れた粒子であることも確認できた。さらに、EDXスペクトルの測定から、C、P、Pdの各元素の存在が確認でき、これにより、得られたPdナノ粒子が、確かに(S)-4,4’-C6F13-BINAPを保護基としたPdナノ粒子であることが確かめられた。さらに、その熱重量分析の結果から、粒子全体に占める有機保護基の割合は87%であることも確認した。溶液の円偏光二色性 (CD) スペクトル測定結果から、金属ナノ粒子特有のコットン効果も確認できた。これにより、(S)-4,4’-C6F13-BINAP NCsがキラリティーを有していることを確認した。以上の研究成果により、超臨界二酸化炭素と高い親和性を持つとされるフッ化アルキル基を導入した有機溶媒に対しても、高い分散性を示す光学活性なPdナノ粒子の合成手法が確立された。
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