研究概要 |
揮発性元素を含む新しいシリサイドおよび他の14族からなる金属間化合物の合成と,それらの結晶構造と特性を明らかにすることが目的である本研究課題では,初年度および次年度で,Naを含む4つの新規のスズ化物および鉛化物が見いだされたことから,最終年度でも引き続きNa-Mg-X (X=Sn, Pb)系の物質探索を主に行なった.その結果,新規のスズ化物Na4Mg4Sn3を合成することに成功し,単結晶のX線回折測定から,その結晶構造(斜方晶系, 空間群Fmmm, a = 0.6879(3), b = 0.7154(2), c = 2.2285(7) nm)を明らかにすることができた.Na4Mg4Sn3の多結晶試料を作製し,熱・電気的特性の評価を行ったところ,Na4Mg4Sn3の電気伝導率(1.0-1.6×10^5 Sm-1)は金属的で,正のゼーベック係数(+33から+66 μV K-1, 300-600 K)を示した.Na4Mg4Sn3のパワーファクタの最大値は4.2×10-4 Wm-1K-2 (600 K)であった. 昨年度に本研究課題で発見された新規鉛化物Na2MgPbの電気抵抗率の温度依存性を測定したところ,値の急激な減少が490 Kと523 Kで観察され,それらの温度で何らかの相転移が起きている可能性が示唆された.高温粉末XRD測定から,室温で六方晶系のNa2MgPb(α相)は,493 Kから出現する六方晶系の中間相(β相)を経ながら,533 Kから633 Kにかけて立方晶の相(γ相)に構造相転移することが明らかにされた. 第一原理計算より,γ相の結晶構造はinverse Heuslar構造であると予測された.
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