研究課題/領域番号 |
23550225
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
塩野 剛司 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (30178850)
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研究分担者 |
岡本 泰則 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (50101259)
塩見 治久 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (60215952)
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キーワード | バイオキャストセラミックス / 炭化ケイ素 / 多孔体 / テンプレート / 木質組織 |
研究概要 |
平成24年度の研究は、前年度の研究で明らかにした最適なバイオキャストセラミックスの合成条件に基づいて、バイオキャストセラミックスの作製を推し進めると共に、その基礎的物性評価を行った。特に、多孔体の特性に重要な細孔径分布を中心に評価した。評価方法として水銀圧入法を用いた。 ラワン材の木炭には細孔径0.05~100μmの細孔が広く分布していたが、Siとの反応後では細孔径100μm付近ではほとんど細孔容積に変化は認められなかったが、30μm以下の細孔領域では細孔容積が著しく減少することが分かった。この30μm付近の細孔は仮導管・木繊維に起因する細孔である。一方、キリ材においては、ケイ素と反応させることによって、10μm付近の細孔を残して全体的に細孔容積が減少した。特に0.5μm付近の細孔に関しては著しく容積が減少することが分かった。これら細孔容積の減少は、SiCの生成に伴う体積増加により細孔が狭められた、あるいは未反応Siの残留による細孔の目詰まりが原因だと判断できた。これらの結果から、今回行った反応焼結法では約100μm付近の細孔は、Siとの反応後においても保持されることが明らかになった。 次に反応焼結後のラワン材、キリ材の通気率を測定評価した結果、ラワン材の通気率がキリ材のものよりも高いことが分かった。すなわちキリはSiとの反応後にその細孔のほとんどを失っているために通気率が低くなったものと判断できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のところ特に問題はなく、ほぼ予定通りに研究が進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までの研究で、バイオキャストセラミックスの作製に木質組織を有するバルク状の炭素材をテンプレートとして利用できることが明らかになった。天然木質材料をさらに炭素源として広く利用されるためには、バルク状だけでなく粉末材料としての応用が重要である。本年度は、得られたバイオキャストセラミックスの性質を評価すると共に、木炭や竹炭などから作製した粉末が粉合成原料としての炭素源になりうるかについての研究を推し進める。具体的には、バルク状の木炭を種々の方法で粉砕し、その木炭粉末を出発原料に、今までの研究で得られた条件でSi粉末と反応焼結を行う。特に細孔組織を制御する目的で、①粉砕および②Siと炭素源粉末の混合比の違いが、SiC多孔体の合成、微細組織に及ぼす影響について調べる。さらに、炭素リッチで作製した多孔体については未反応の炭素を加熱除去することで、組織、性質がどのように変化するかを明らかにし、多孔体作製の基礎を確立したい。炭素源の木質材料としては樫炭と楢炭を用いる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が0円にならず、24,657円となった。これは、雰囲気焼成用のアルミナ管を購入予定していたが、金額が足らなかったため、購入できなかったからである。このアルミナ管については、平成25年度の研究費を加え、購入する。 平成25年度は、バルク状のバイオキャストセラミックスの作製に加えて、粉末木炭を利用した反応焼結が新たな研究課題として加わる。25年度の研究経費はおもに試料作製のための木材、木炭、試薬の購入、および反応焼結を行うための電気炉の維持に要する消耗品(発熱体、高純度アルミナ管、煉瓦)の購入に使う。
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