研究課題/領域番号 |
23550227
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
山崎 鈴子 山口大学, 理工学研究科, 教授 (80202240)
|
研究分担者 |
安達 健太 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (80535245)
|
キーワード | 環境材料 / 触媒・化学プロセス / 複合材料・物性 / 光触媒 / 有機塩素化合物 |
研究概要 |
昨年度の研究により、酸化チタン-酸化タングステン混合ゾル系において得られた光触媒活性の促進を複合型ペレットという固体系で実現するためには、酸化タングステンの添加に伴う比表面積の大きな低下を抑制することが必要であることが判明した。そこで、今年度は、それぞれのゾルの調製法や、両ゾルの混合の条件を変えて、複合型ペレットの合成を行うことにした。現在の酸化タングステンゾルは直径約20 nmの球状粒子であり、乾燥、200℃焼成後の比表面積は 1.8 m2 g-1と極めて小さい。そこで、酸化タングステンに吸着しやすい有機物を共存させ、乾燥後、有機物を焼成除去することで細孔を導入し、比表面積を増加させることを目的とした。添加する有機物として、エチレングリコール、クエン酸、臭化セチルトリメチルアンモニウムを用い、ゾルに水熱処理を行って、比表面積を大きく低下させずに酸化チタンと複合化できる手法の確立を目指した。また、塩化ナトリウムをキャッピング剤として添加した合成法も試みた。その結果、酸化タングステン:酸化チタン= 5 : 95の比率で、比表面積を8~22%増大させた複合型ペレットの合成に成功した。得られた最大の比表面積は200℃焼成体で237 m2 g-1であった。しかし、気相中でのトリクロロエチレンの分解において光触媒活性を評価したところ、複合型ペレットの光触媒活性は酸化チタンペレットよりも低下した。その原因として、現時点では、(1)合成時の反応物質が触媒表面に残存している、(2)反応の副生成物が触媒表面へ吸着していることが考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
比表面積の低下を抑制できれば、高活性な複合型ペレットが作製できるという昨年度得られた研究指針に基づいて、種々の合成法を試み、比表面積を低下させない複合化法を見出した。しかし、混合ゾル系で得られた複合化による光触媒活性の増加を固体系で達成することには未だ成功していない。当初の計画通り、目標を達成するためには、もう1年かかりそうである。
|
今後の研究の推進方策 |
複合型ペレットによる光触媒活性低下の原因が、研究実績の概要欄に明記した(1)、(2)のいずれによるものかを明らかにする。そのために、合成時の焼成温度の影響や、反応後の複合型ペレット表面に吸着している化学種を同定する。ゾル系で得られた最適な混合モル比は、酸化タングステン:酸化チタン = 1 : 2であったので、複合型ペレット中の酸化タングステン含有量を増やし、酸化チタンを超える高活性な複合型ペレットを合成するための最適なモル比を決定する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究計画調書では、照射光波長の影響を調べるために、平成24年度に石英ライトガイド付きメタルハライドファイバー光源(19万円)を購入する予定であった。しかし、H23年度に、他の競争資金で高性能なキセノンランプ照射装置を購入することができ、本研究にも使用できたので、上記光源を購入する必要がなくなった。そのため、約11万円の研究費が残った。残額は、25年度の実験に必要な試薬や器具の購入に使用する予定である。
|